戦略コンサルのトップ5%だけに見えている世界 思考し続け、創造性あふれるAI時代へ

優れた知識・専門性を持つ「世界最強・最先端の知的エリート」戦略コンサルタント。その中でも真の一流たちには、どのような世界が見えているのかーー。

その世界に近づくため、トップ5%のモノの見方を言語化した一冊が『戦略コンサルのトップ5%だけに見えている世界』です。著者の金光隆志さんは「トップ5%が持つ思考態度は、AI時代を生きる私たちにも関係する」と言います。

戦略コンサルタントとして30年以上のキャリアを誇る金光さんは、近年は次世代の育成にも力を入れています。業界の未来を切り拓く金光さんとともに、これからの時代に必要な思考力について考えました。
クロスメディアグループ代表の小早川幸一郎のインタビューでお届けします。

金光隆志(かねこ・たかし)

株式会社クロスパート代表取締役、戦略コンサルタント。京都大学法学部卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。同社マネージャーを経て、株式会社ドリームインキュベータ(DI)の創業に参画、取締役を歴任。DI取締役退任後、ベンチャー企業の代表などを経て、株式会社クロスパートを創業、代表取締役に就任する。クロスパートでは、戦略立案や組織改革はもとより、長期事業構想、事業アイデア創出、事業開発、コーポレートベンチャリングなどの事業創造に関わるテーマに数多く従事。2024年には未来を担うリーダー人材の育成・研修事業を行う株式会社クロスサイトを創業した。

小早川幸一郎(こばやかわ・こういちろう)

クロスメディアグループ(株)代表取締役
出版社でのビジネス書編集者を経て、2005年に(株)クロスメディア・パブリッシングを設立。以後、編集力を武器に「メディアを通じて人と企業の成長に寄与する」というビジョンのもと、クロスメディアグループ(株)を設立。出版事業、マーケティング支援事業、アクティブヘルス事業を展開。

企業の取締役からロックミュージシャンに

小早川:早速ですが、金光さんのこれまでのキャリアをお話しいただけますか?

金光:学生時代は政治や哲学に興味を持っていました。そんな私がビジネスへ興味を持ったきっかけになったのが、偶然出会った赤い表紙の本でした。ボストンコンサルティンググループ(以下、BCG)の創業者が書いた『経営戦略の核心』(ブルース・D.ヘンダーソン著、土岐坤訳、ダイヤモンド社)です。
それまで未知の領域だったビジネスが、想像以上にダイナミックな世界であることを知って、衝撃を受けたことを覚えています。

小早川:「戦略」はもともと軍事から派生した言葉ですが、ビジネスでの戦略の面白さにも気づかれたわけですね。

金光:そうです。「こんな創造的な思考で世界にインパクトを与えている人たちと働きたい」と思っていたところ、BCGのオフィスが日本にあることを知りました。関係者を必死に探し求めていると、ちょうど東京でBCGが学生募集をしていることを友人が教えてくれたのです。当時は関西に住んでいたのですが、採用試験を受けさせてほしいと直談判し、無事働けることになりました。

小早川:まさに本から導かれたような出会いですね。

金光:本当にそうなんです。2000年まで約11年間所属させていただきました。その後、ベンチャーへの関心から新たに創業時から参画させていただいたドリームインキュベータでは、従来の戦略コンサルティングに加えてベンチャー育成や大企業の新規事業創造の支援を約4年間担当し、取締役まで歴任しました。その後は何を間違えたのか、なんとロックミュージシャンになりまして(笑)。
実は学生時代にも音楽に親しんでいたのですが、 学問を優先するため音楽を断念したあとは音楽に触れることさえ嫌になっていました。にもかかわらず、急に会社を辞めてしまったんです(笑)。

小早川:ユニークでいいですね(笑)。

金光:37歳でギター&ボーカルでデビューし、さらに音楽仲間と事務所やレーベルをつくるうちに、いつの間にか音楽業界のビジネスマンになっていました(笑)。
5、6年続けましたが、素人が通用する世界ではないことを痛感し、コンサルタントに復帰して今に至ります。
戦略コンサルタントの仕事は、想像以上にクリエイティブさが求められます。優秀なクライアントの方々が持つ発想とはまた違う、ユニークな切り口から戦略を立てることが私たちに求められる付加価値だと思いますね。

小早川:戦略コンサルタントの「お堅い・賢い」というイメージとは違い、金光さんのようにユニークな方もいらっしゃるんですね。

金光:BCGではごく普通の人間でしたよ(笑)。特に昔は、かなり個性的な方が多かったように思います。 

小早川:ロックな人たちの集まりだったかもしれませんね。

金光:そうなんです。僕の場合、本当にロッカーになってしまいましたが(笑)。

AI時代に必要とされる人間特有の知性

小早川: AI時代と言われる今、戦略コンサルタントとAIとの関係性についてもよく言及されるのではないでしょうか。本書にもAI時代に必要な人間の知性について書いていただきました。その点についてくわしくお話しいただけますか? 

金光:今の戦略コンサルタントはさまざまな思考法や専門性だけでなく、進化した情報テクノロジーや生成AIを使いこなす能力まで持っています。最高に優秀な方々で、その能力は生産性を上げる上でも大いに役立つでしょう。ですが、戦略を立てる上で何より大切なのは、出てきた答えに対して違う切り口から考え直したり、問題自体を問い直したりすること。これはAIにはできない考え方です。この「人間だけに残された思考領域」をどのように活かしていくべきかを書かせていただきました。

小早川:なるほど。私もAIを使うことはありますが、インパクトのあるアウトプットはなかなか出てこないと感じています。人間にしかできない思考があるからこそ、AIに違和感を覚えるのですね。

金光:その通りです。私ももちろんAIを活用しますが、AIとの対話には刺激がありません。こちらが切り口をセットすると、完璧な答えを出してくれることは圧倒的な強みなのですが。

小早川:そう考えると、豊富な経験や知識を売りにしているコンサルタントやビジネスパーソンは、危機感を持って仕事をする必要が出てきそうですね。

金光:そうですね。専門性や知識を身につけたり、論理的に素早く正しいことにたどり着いたりすることはAIがやってくれます。つまり、それらは「誰でもできること」になっていきます。その分、これからの人間はクリエイティブな知性に振り向けられるでしょう。
それを怖いと感じるのは、今まで積み上げてきたことにしがみつく人間の弱さなのかもしれませんね。私自身はAIが仕事を奪うというふうには考えておらず、。過渡的な状況はあるにせよ、AIをうまく使いながら、その先、よりクリエイティブな仕事へと移行していくのではないでしょうか。

小早川:これから生まれてくる人は、「AIネイティブ」として当たり前のようにAIをうまく使いこなしていくのでしょうね。

金光:そうだと思います。

思考を動かしつづけて発揮される創造性

小早川:思考枠と思考態度に関する内容も非常に勉強になりました。中でも「思考態度は思考法より重要だ」というご指摘は、本書の大きなポイントでもあると思います。くわしく教えていただけますか?

金光:先ほども申した通り、今はAIを活用すればすぐに正論や定石の答えにたどり着くことができる時代です。だからこそ、出された答えを疑い考え直すための「問いを発する力」が大切なのです。
普通は1つの答えが出ると、思考を止めてしまいます。でも、そこでとどまらず「本当か?」と思考を動かし続けることが重要で、創造性はその先にあるものなのです。それが本書でいう「創造的思考態度」です。戦略コンサルタントの中でもごく限られた人だけが持つ思考習慣でもあり、非常に大きな価値を持つということをお伝えしたいです。

小早川:思考を動かし続けることの大切さを感じるとともに、私自身も思い込みや既成概念に捉われていたことに気づかせていただきました。その気づき自体に本書の価値があるのではないでしょうか?

金光:まさに、そこに気づいていただくことが著者としての一番の狙いです。戦略コンサルタントに限らず、どんな仕事でも、何事においても大切で価値のある考え方だと思っています。

時代を変える若者に期待大!

小早川:本書の内容を実践に移すために、新しく株式会社クロスサイトを立ち上げられたとお聞きしました。主にどういった取り組みを予定されていますか?

金光:企業向けには「思考するとは」「突き抜けてクリエイティブに考えるとは」ということを体感・習得していただくためのセッションや研修サービスを展開する予定です。それぞれの社員に合った研修をご提案できるように、個々のスキルレベルや適正を診断できるものも準備しているところです。
個人向けには研修に加えて、メンターのようなことをしていきたいと考えています。若い方たちが私の本を通して学びたいと思ってくれたとしたら、その時点で学ぶスタンスは充分。本の内容にあることを伝えていくのはもちろん、アドバイザーとしてそばにいることを何よりも大切にしたいと思っています。理想は「ゆるやかなサークル」です。

小早川:若い方ほど思考の枠を外して面白い発想をしてもらいたいですよね。

金光:これからの時代を本当に変えていってくれるのは若い方たちだと思うんですよね。

小早川:私自身、つい自分1人で新しい商品・サービスを開発してしまうことがあります。「もっとスタッフにも考えてもらいたい」と思いながらも、彼らが思考し、チャレンジできる環境をつくれていないのは私自身なのかもしれません。そういう意味では、本書を弊社のスタッフみんなに読んでもらって、クリエイティブな集団になれたらと思うんです。ぜひ読んでください、皆さん!(笑)

金光:ありがとうございます。クライアントの方が鍛え導いてくれた結晶ですので、読んでいただけると嬉しく思います。自分で言うのはおこがましいですが、相当練り込みましたし、他のコンサルタントの方とは違う切り口で書くことができたように思います。
実は「創造性を発揮する」ことに対して、興味を持っている戦略コンサルタントはごくわずかです。その中でもたった5%の戦略コンサルタントが持っている、創造性あふれる考え方を本書に存分に詰め込みました。学んでいただければ、まさに「最強」になれると信じています。そして、クロスサイトで私と一緒にこれからの未来をつくっていくことができれば、なお嬉しく思います!

編集後記
「トップ5%」は遠い存在であっても、その思考には近づくことができます。創造性豊かなその思考を習得できれば、AIの台頭を恐れる必要はありません。むしろAIを活用しながら、「世界を面白くする」一員となれる可能性を、金光さんの語りから感じることができました。

編集・文:濱中桃花(クロスメディア・パブリッシング)

戦略コンサルのトップ5%だけに見えている世界

著者:金光隆志
定価:1,848円(1,680円+税10%)
発行日:2025年2月1日
ISBN:9784295410560
ページ数:256ページ
サイズ:188×130(mm)
発行:クロスメディア・パブリッシング
発売:インプレス
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