年収350万円で家を建てる。地域トップの不動産会社が提供する「幸せ」とは


自社開発した住宅ブランド「ユニテハウス」をフランチャイズ展開し、山形県内で14年連続着工棟数No.1を誇るクリエイト礼文。ターゲットは年収350~450万円の、住宅購入をあまり考えたことのない人たちです。
同社のビジョンは「私達はQOLファーストな企業を目指します」。家が単なる“モノ”ではなく、“より良い生活の質を生み出す空間”であるためには、何が必要なのでしょうか。


大場 友和(おおば・ともかず)

株式会社クリエイト礼文代表取締役CEO
1976年山形県生まれ。クリエイト礼文が建築事業を導入した1997年に、2×4工法のフレーマーとして入社。3年間の職人経験を積んだ後、当時、自社での実績が年間数棟しかない時代から営業マンとして実績を積む。2005年から、建築営業の傍ら不動産部門(賃貸仲介管理、売買仲介)の体制構築や拡大業務に取り組む。

2010年には初の拠点展開となる宮城県仙台市に営業所(現:仙台支店)を開設し、建築事業拡大に大きく貢献。フランチャイズ事業開始後、埼玉県の加盟企業の事業推進のために3年間出向。本社に復帰後、経営全般のほか、フランチャイズ事業の拡大に伴い事業責任者として全国の加盟企業を訪問し、指導を行いながら加盟開発を実施。2019年6月放映のTBS「がっちりマンデー!!」に出演し大きな反響を呼んだ。「QOL住宅で縁ある人々を幸せに」を理念とし、自社ブランド「ユニテハウス」を全国へ広げる活動を日々行っている。

その傍ら、地方創生による地域の活性化と好循環の維持を目指し、山形県内の過疎地域の問題解決にも取り組んでいる。県内の市町村と包括連携協定を締結するなど、自治体と連携し積極的に地域課題解決に向けた活動を日々行っている。

「プチトマトの採れる庭」のある生活を

庭のデッキで日光浴をする。家族が集まれる広いLDKでの朝食には、子どもたちが庭で育てたプチトマトが並ぶ。そうして家の中でエネルギー高まる時間を過ごし、仕事に出かけていく……。

お客様にはこうした暮らしをイメージしてほしい。私たちは、デザインや機能の良さだけでなく、住む人がずっと幸せでいられる「QOL住宅」を提供することを目指しています。

自社ブランドである「ユニテハウス」のターゲットは、20~30代で年収350~450万円、お子さんがいる4~5人家族で、賃貸アパート住まいの方々です。そのため、比較的安価な家を提供しています。

家は、住む人が心身共に健康でいるための土台です。もっとも人生を謳歌できる30~50代のときに、「毎月返済が大変だ」と切り詰めるのは寂しい。かといって、家を持つことの喜びも味わえなければいけません。幼い子どもに「近所に迷惑だから静かにしなさい」と言わなくてはいけないような環境ではなく、庭のある空間で育てる。機能とコストのバランスが取れた、快適な家で生活してほしい。

そのために、お客様にはコスト面についてしっかり提案します。年収によって、借りることができる金額は決まりますが、借りられる額と無理なく払っていくことのできる額には隔たりがあります。それをはっきり伝えます。

いまは「商品の時代」ではありません。「サポートとサービス」が重要であり、そこには「配慮と気遣いの深さ」が求められます。お客様を本当に幸せにするには、失注するとしても言うべきことを言う。勇気を振り絞って、否定的な提案をする。本当の配慮と気遣いとは何かを考えると、そうした姿勢が必要だと考えています。

先代の渡辺晃が弊社を創業したときから、「家を建てた直後に瞬間的な効用があっても、時を刻んでいくなかでだんだんとその効用が低くなっていくのではいけない。常に一定の効用があること、効用の最大化が大事だ」ということにこだわっています。住宅を買うときは、家が建ったときのこと、近い将来の幸せに目がいきがちです。しかし、人生はその後もずっと続いていくのです。

100年の人生を考えるとき、住宅はどうあるべきか

「ユニテハウス」は、矩形(真四角)で2階建ての設計です。この形が、最も効率よく部屋を設計できます。それに、ライフスタイルに合わせて間取りを変化させやすい、という利点もあります。

家を建てたとき子どもが小さかったとしても、20年たてば大学生、社会人です。子どもが家を出れば、子ども部屋は必要なくなります。そうしたとき、矩形の家であれば、間仕切りをなくしたり加えたりすることが容易です。例えば、子ども部屋とリビングをひとつにして、より広いスペースにできる。複雑な形状の住宅では、こうしたことがしづらくなります。

ほかにユニテハウスの大きな特徴としては、ベランダがありません。みなさんあまり知らないことですが、ベランダの防水効果は、実は10~11年ぐらいで切れてしまいます。住宅の天敵は水。中古住宅などを見ると、ベランダあたりが朽ちているものもあります。 

買ってしばらく経ったところで費用のかかるメンテナンスが必要となると、経済的にも苦しくなります。実際にベランダで何をするか考えると、そんなに用途はないのではないでしょうか。

また、建物の外壁に金属系のサイディングを標準採用しています。通常の住宅では、10年に1回程度壁の塗り替えが必要になります。金属系のサイディングは耐用期間が長く、これも長期的なコストカットにつながります。

私たちはお客様に設計図面をお見せする際、隣に必ず「未来年表」を並べます。これは、ご家族の名前と現在の年齢を書き入れた、未来の年表です。家族形態がどのように変わり、どのような生活を送ることになるのか。お客様にとってのQOLの高い人生を、先回りして提案しています。

家を建てるとなると、やはりなるべくたくさんの機能を詰め込みたくなります。不動産会社によっては「住宅ローンと自己資金でいけば、ここまでの金額で建てられます。最大限快適な家にしましょう」「100万を35年ローンに換算すると月3000円です。タバコを我慢すればこのオプションを付けられますよ」と営業することもあります。 確かに、それで半年後の生活は幸せになるかもしれません。しかし、長い目で見たときにどうか。不動産会社の人間は、「家を売るわけではなく暮らしを売っている」と口を揃えますが、本当にそれができているのかを考えなければいけません。

家を建てた人は住宅のどんな部分を重視するようになるか

「QOL」の高い住宅の方向性を検討するために、住宅の建築販売を始めた当初、家の購入を考えたことがない人、もう間もなく家を持つ人、購入した家に住んでから数年目の人を対象に、家に求めるものなどを50項目程度挙げて分析しました。

購入した家に住んでから数年目の人の回答に着目すると、購入時はさまざまな情報を見て、「あれもいい」「これもいい」となりがちですが、実際に住んでみれば憧れだった機能も普通に感じるようになり、結局不要になるものもあるとわかりました。例えば「おしゃれだと思っていたキッチンが、40代になってから使い勝手が悪くなったと感じる」ということが起こり得ます。

ほかにも、住宅購入経験がある方は、家の設備機能や周辺状況よりも、「イニシャルコストが抑えられているか」「リビングが広いか」「メンテナンスしやすいか」「ライフスタイルの変化に対応可能か」「維持修理の保証が十分にあるか」などということを重視する傾向があります。このように、機能とコストのバランスの大切さが、実際に家を建てた人の意見からもわかります。

ただ、もちろん実際に住んでみないとわからない部分もあります。その家でどんな生活ができるのか、なるべくリアルにイメージしてもらうことが大切です。弊社では総合展示場は出さず、街の中に展示場を置いています。展示場では、生活シーンをイメージしていただけるように、家族構成までペルソナを設定したうえで、家具や家電、小物をセッティングしています。

一般的な総合展示場は、何百万もするような家具を置いて綺麗にしていますが、弊社はリーズナブルなブランドのものを置いています。カーテンもコーディネートして、「これらの家具を一式持てますよ」というように、リアルな提案を心掛けています。

他社との比較ではなく、いまの家賃と同程度の支払いでどのような生活ができるのかを感じてもらうことが、未来の幸せに繋がっていきます。

お客様にとって最愛のブランドであるために

新築販売を始めた当時、おかげさまで軌道に乗り継続して受注をいただいていたこともあり、口コミで「クリエイト礼文は建てっぱなしだ」と言われた時期があります。その経験から、先代の後を継ぐと決まったときから、「お客様のファン化」を1丁目1番地でやろうと決めていました。

一般的な定期メンテナンスや点検はもちろん、「ユニテレディ」という担当者に3か月に1回、物件を回ってもらっています。特に用事がなくても、そこでお話をきいて、「そろそろお子さん受験ですよね?」と暮らしの様子を伺うなど、コミュニケーションをとってもらっています。

ご購入者の方は共働き率が高く、平日はご不在のことが多いので、その場合はご案内のチラシや手紙などを投函します。実際に会えなくても、「来てくれている」「気にかけてくれている」と感じてもらうことが非常に大事です。

こうしたことは、お客様にとって最愛のブランドであり続けるために、地道にやっていくべきです。結果としてお客様のご紹介にもつながっており、ファン化が進んできたと感じています。

幸せを提供する側も幸せでなければいけない

私は、人を主役にした「人軸経営」に重きを置いています。ユニテハウスが「最愛のブランド」であるためには、社員自身がブランドである必要があります。そして「QOL住宅で縁ある人々を幸せにする」というミッションのためには、まず社員が幸せになること。自分が満たされて初めて、人に幸せを提供できるはずです。

社内では、社員それぞれの幸せを追求するために、ワークライフバランスや働き甲斐について一緒に考えます。「何かを学びたい」のなら、何を学ぶのか、どんな資格を取りたいのか。「自由がほしい」なら、タイムリッチを大切にするのかマネーリッチなのか。それらの欲求が自分にとって具体的にどういうものかを1on1で考えます。心身共に健康な状態でいるために、ヨガ体験など健康を促進する福利厚生も充実させています。

また、幸せを売る側として、家族を大切にすることは必須です。私は正月に子どもから1年の行事をすべて聞いてスケジュールに入れるようにしています。

もちろん、社員も同じようにできなければいけません。以前は残業の少ない会社とは言えませんでしたが、意識的にその部分の変革を行いました。結果的に残業時間は令和2年と4年を比較すると13%削減しています。また有給消化を促して、必要な時にちゃんと休みを取ってもらうようにしています。

家に求められる「不易」変えていくべき「流行」

先代の渡辺は、弊社の創業前から不動産鑑定業を行っています。3万軒の家を鑑定する中で、築1~2年の物件が、家族写真が置かれたまま競売に出ているのを見る。そうした経験を重ねる中で、「スペックの良い家や広い家を建てただけで、幸せを提供しているといえるのか?」と、疑問に思ったそうです。そして「年収350~450万の人が無理なく幸せに過ごせる快適な住まいとは、どんな家だろう?」と考え、開発されたのがユニテハウスです。

松尾芭蕉が俳諧の理念として説いたと言われる、「不易流行」という言葉があります。その意味するところは諸説ありますが、私は「時がたっても変化しないもの(不易)の中に、新しい変化(流行)を取り入れていくこと」だと考えています。

いつの時代も家に求める「不易」とは、自分とその家族がずっと幸せに質の高い生活を送り続けるための器であることだと思います。先代は、この「家に求められる不易」を貫いてきました。これは、当社の今後も変わらない土台です。

ただし、残念ながら人の想いは他人にバトンを渡すと薄まります。それを何とか継承したいと、先代は書籍として残してくれました(『100年使える「箱の家」をつくる』)。この本は私にとって経営の理念とその目的と日々の行動を常に一致させるためのノーススターです。「QOL住宅」に込められた先代の想いを見返すことが、企業として一貫性を持ち続けることにつながっています。

私の役割は、その時々の外部環境や社会情勢、国策、トレンドなどを先読みし、変化を加えて「流行」の部分を担っていくことです。大きな変化を起こすのではなく、不易を守りながらカスタムしていけば、いつの時代も、家を「モノ」ではなく、「コト」として販売できるはずです。先代から続く「不易流行」の大切さを、次の世代にもしっかり伝えていきます。

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