「配当株投資」という投資法があることを、ご存知でしょうか? 上場企業の株を購入して株主になれば、その株を持っているだけで、企業が利益に応じて分配する「配当金」が得られるという投資法です。
この配当株投資の情報を発信し続け、12万人のフォロワーを持つのが配当太郎氏。自分の発信が多くの人に届くことには、喜びとともに大きな不安もある。それでも発信を続ける理由を聞くと、「冷静な分析家」とは別の顔が見えてきました。

配当太郎(はいとうたろう)
投資家。学生時代に株式投資を始め、リーマン・ショックを経て、配当株投資に目覚める。
大型株を中心に投資し、保有銘柄の9割は配当金が年々増える「増配銘柄」が占める。Twitter(現・X)のフォロワーは12万人超。毎日、配当株投資に関する情報を発信している。はじめての著書『年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資』(クロスメディア・パブリッシング)は6万部を超えるベストセラーに。
「買う」「売る」だけではない株式投資の魅力

株式投資と聞いて、多くの人がイメージするのは、買った株が購入時よりも高値になったときに売却して、その差額で利益を得る「キャピタルゲイン」ではないでしょうか。
配当株投資は、株の売買を繰り返す必要がなく、企業が利益を上げ続けていれば、黙っていても配当金が入ってくるという仕組みです。株式投資をやっている方であれば、すでに常識かもしれませんが、一般的な知名度や認知度は、まだ発展途上だと言えます。
私は、2021年2月にTwitter(現・X)を始めて、配当株投資の魅力や、取り組み方についての情報を定期的に発信しています。これまでの2年半の間にじわじわと注目を集めるようになり、現在のフォロワー数は12万人を突破しました。
フォロワー数が1万人を超えたあたりで、クロスメディア・パブリッシングの編集者の目にとまり、2023年2月に初めての著書『年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資』を出版しました。

この本は、タイトル通り年間100万円の配当金を目指すための配当株投資との向き合い方を、初心者でも理解できるように解説したものです。私の想像を遥かに上回るほどの反響を呼んで、発売から半年で6万部を超えるヒットとなっています。
12万人のフォロワーや、発売した書籍が思わぬ高評価を得たことで、私は情報を発信することの意味や意義、責任の重さを改めて痛感しただけでなく、これまでに感じたことがない「嬉しさ」や「不安」と出会うことになりました。
私がなぜ「配当株投資」の魅力を発信し続けているのか、その理由を詳しくお伝えします。
フォロワーゼロから2年半で10万人
私がTwitterを始めたのは、最初から配当株投資の情報を発信しようと思ったからではありません。アカウントを作る際に、「自分が継続的に情報を発信できるテーマは何だろうか?」と考えていたら、「配当株投資であれば、自分の経験をリアルに発信できるかもしれない」と思いついたのです。

私が初めて証券会社に口座を開いたのは、まだ学生だった2006年の夏ですから、株式投資を始めて今年で17年ほどになります。2008年に「リーマン・ショック」の直撃を受けたことで、それまでのキャピタルゲインから、配当株投資に軸足を移しています。
この間、ほかにも2011年の東日本大震災や、2020年のコロナ・ショックなど、さまざまな局面に遭遇して、自分なりの試行錯誤を繰り返してきました。その体験を伝えていけば、リアルな情報発信ができるかもしれない、と考えました。
その時点では、配当株投資を広めるという考えはなく、自分の経験を言葉にして発信したら、「どんなことになるのかな?」くらいの軽い気持ちでした。
フォロワーがゼロの状態からスタートして、最初の頃は思うように数字が伸びず、フォロワー数が1000人に達するまでに10カ月くらいかかりました。そこから少しずつ上昇曲線を描くようになり、ちょうど1年目の2022年2月には5000人に。そこからは毎月1000人ずつくらい増え続けました。
1万人を超えたあたりで、ここからは毎週1000人くらい増えればいいなと思っていたところ、実際には毎週4000人、5000人も増える状況が続くことになり、約2年半で10万人を突破しています。
「現状分析」ではなく、自分の「経験」を情報として発信する
私の発信する情報が、なぜ多くの人の関心を集めることになったのか?
現在では、私と同じように配当株投資の情報を発信する方が増えていますが、その違いは「発信内容」の差にあると考えています。
多くの場合、「あの銘柄が増配した」とか、「この銘柄は減配した」などの「現状分析」となっています。私自身、そのような発信もしますが、もっと大事なことは「それをどのように受け止めればいいのか?」をいかにわかりやすく伝えるか、だと感じています。

配当株投資では、企業が利益を上げて、株主に分配する配当金を増額することを「増配」といいます。この増配が、配当株投資を成功に導くための成長エンジンといえます。増配が見込めそうな優良企業を選び、その持ち株数を増やしていけば、得られる配当金は雪だるま式に大きく成長します。私は、それを「配当金ダルマ」と呼んでいます。
配当金ダルマを大きく育てるためには、最低でも10年くらいのスパンで考える必要があります。配当株投資の成否は、「どうすれば無理のない範囲で株を買い続け、それを持ち続けることができるのか?」というマインド作りがカギを握っています。
私の配信が多くの方々に支持されたのは、単なる現状分析ではなく、自分の経験を通して現状を読むことによって、配当株投資に不可欠な「マインド形成」を重視していることにあると考えています。
配当株投資の一番の魅力は、誰もが平等に利益を得られること
Twitterを始めた当初は、1万人のフォロワーを目標にしていました。「1万人を突破すると、自分の発信が広まりやすくなるかな」と思っていたのですが、5万人を超える頃には、「発信する内容には十分に注意を払う必要がある」と感じるようになりました。
「この銘柄を買います」などとは、気軽に発信できないのです。最初から相当に気をつけてはいましたが、軽い気持ちで個別銘柄を出してしまうと、多くの人がそれに反応して、株式市場に少なからぬ影響を与えてしまうことになるからです。例に出す銘柄も時価総額が大きい銘柄を中心としています。
フォロワーが10万人を超えると、場合によっては、人の人生を左右するようなことも起こる可能性があります。多くの人に支持されているという喜びの一方で、不安とか恐怖にも似た感情を抱くようになりました。

最初の頃は、どちらかというと、「自分がこうありたい」とか、「こう思っている」ということを発信していましたが、最近では、「みんなが何を不安に思っているのか?」を汲み取りながら、そこに向けて情報を発信する傾向が強くなっています。SNSとは、本来は自由に自分の意見を発信できる場所のはずですが、そこには「社会的責任」が伴うことを改めて感じることになり、自分の中に緊張感が生まれています。
私にとっての一番の喜びは、自分がいいと確信して発信している配当株投資に関する情報を、たくさんの人が受け止めてくれて、「非常に参考になった」「モチベーションが高まった」とポジティブな反応を返してくれることです。
配当株投資は、株を買って株主になれば、企業がその持ち株数に応じて平等に配当金を分配してくれますから、企業には資金が調達できるメリットがあり、私たちも利益が得られるというウインウインの関係性で成り立っています。
一方に利益を得たら、もう一方は同じだけの損をするという「ゼロサム」の世界ではなく、誰でも始めることができて、誰もが平等に利益を得ることができます。この魅力を多くに人に伝えたいという思いが、私が配当株投資の情報を発信するモチベーションになっています。
配当株投資を一過性のブームで終わらせてはいけない
Twitterを見たり、書籍を読んだりしてくださった方は、私を冷静な人間だと思っているかもしれませんが、自分では根っ子に熱いものを持った「お祭り男」だと思っています。「世の中には、こんなにいいものがあるんだから、上手に活用して、みんなで幸せになろうよ!」というのが、私の本心です。

株式投資とは、「企業が多くの人から資金を集めて、それを元に業績を上げ、その利益の一部を株主に還元する」というのが本来の主旨です。その点で、私はキャピタルゲインではなく、配当株投資が株式投資の「王道」であると考えています。
お祭り男としては、配当株投資こそが株式投資の「王道」であり、みんなが一緒に幸福になれるものなのだということを強くアピールすることで、たくさんの人の気分を盛り上げていきたいと思います。
最近では、メディアの後押しもあって配当株投資がブームになっていますが、これを一過性のブームで終わらせてはいけません。一部の人だけがやっていた配当株投資が、ようやく幅広い人々に認知され始めたのですから、この流れをしっかりと根付かせることを目指して、これからもさまざまな形で配当株投資の情報を発信していきたいと考えています。

年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資
著者:配当太郎
定価:1738円(1580+税10%)
発行日:2023年2月11日
ISBN:9784295407911
ページ数:240ページ
サイズ:188×130(mm)
発行:クロスメディア・パブリッシング
発売:インプレス
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