企業が社会的な意義や価値を持つことが求められる現代において、パーパス(存在意義)の重要性が注目されています。
パーパスは企業の存在理由や目的を示し、社会に対する貢献を明確化するものです。本記事では、パーパスの真髄や重要性、そしてパーパスを持つことによって企業が得られる驚くべきメリットについて探求します。
また、社会の変化や消費者の意識の変化がパーパスの脚光を浴びる背景を解説し、最後にパーパスを設定する方法とその浸透を実現する方法についても触れます。
企業がパーパスを持つことで、社会的な影響力の拡大や従業員のエンゲージメント向上、顧客忠誠度の向上など、多くのメリットを享受することができます。パーパスの力を理解し、企業の持続的な成長と社会的貢献を実現しましょう。
パーパスとは
パーパスの真髄とは?その定義と概要
パーパスとは、企業が存在する理由や目的、社会に対して果たす役割や貢献を表す言葉です。パーパスは、単なるビジョンやミッションとは異なり、社会的な意義や価値を明確にするものです。また、企業の本質やアイデンティティを示すものであり、経営方針や戦略の根幹をなすものです。パーパスを設定することで、企業が何を目指すのか、何のために働くのか、どんな社会を作りたいのかという消費者の問いに答えることができます。
パーパスの重要性と役割
パーパスを持つことは、企業にとって3つのメリットをもたらします。
1つ目は、パーパスを設定することによって、社会に対して企業がどんな価値を提供するのかを伝え、消費者やステークホルダーからの信頼や期待を得ることができます。
2つ目は、パーパスで使命を明らかにすることで、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めることができ、経営者に対しても企業がどんな方向性を持つのかを示すことで、長期的な成長やイノベーションを促進することができます。
3つ目は、企業が与える影響や責任を社会に意識させることで、持続可能なビジネスモデルを構築することができます。
つまり、パーパスは、企業にとって最も重要な資産のひとつであり、競争力の源泉です。
パーパスが脚光を浴びる背景
社会の変化と企業に求められる役割の明確化
パーパスとは、企業や組織、個人が何のために存在するのか、すなわち「存在意義」のことです。パーパスを持つことは、単に利益を追求するだけではなく、社会に対して何らかの価値を提供することを意味します。パーパスは、企業の指針となり、事業の原点や根を示すものです。
近年、パーパスが注目される背景には、社会の変化が大きく関係しています。特に2020年には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界中に大きなインパクトを与えました。こうした状況を受けて、企業は自分たちのパーパスを見つめ直すようになりました。
社会情勢が大きく揺れ動く中で、パーパスは企業の指針となり「自分たちがあるべき姿、今やるべき事業活動」がおのずと見えてきます。
実際にコロナ禍において、日本のさまざまな企業が、人々の生活や医療環境を守るための取り組みを行いました。
例えば、トヨタ自動車株式会社は、「ココロハコブプロジェクト」において医療現場の支援活動を行いました。プロジェクトの一環として、3つの工場で医療用フェイスシールドの生産に取り組み、2020年4月にはフェイスシールドの生産を月産4万個(約2,000個/日)レベルで開始しています。また、シャープ株式会社も危機的なマスク不足を受けて、2020年3月よりマスクの生産を開始しました。
これらの企業は、自社のパーパスに基づいて社会的責任を果たそうとしました。このようにパーパスは、企業が社会とどう関わっていくかを示すものであり、社会から求められる役割を明確化するものです。
消費者の意識の変化と期待
パーパスが注目されるもう一つの理由は、消費者の意識や期待が変化していることです。特にミレニアル世代(2000年代に成人あるいは社会人になる世代)は、パーパスを重視する傾向が強いと言われています。
米国でSNSを運営するLinkedInが2016年に実施した調査では、「人々の生活や社会に対してポジティブなパーパスを掲げる企業で働くならば、給与が下がってもいい」と答えた人が49%でした。また、大手コンサルティング会社のアクセンチュアが2018年に実施した調査では、「企業のパーパスに共感できない場合は、その企業の製品やサービスを購入しない」と解答した人は63%に上り、高い数値を示しています。
これらの調査からわかるように、ミレニアル世代は、自分たちが働く企業や購入する企業のパーパスに対して敏感であり、パーパスが自分たちの価値観と一致するかどうかを重視しています。
ミレニアル世代は現在の20~30代であり、これから消費やビジネスの中核を担う存在といえます。パーパスを見直し、ミレニアル世代の共感を得ることは、企業にとって今後さらに重要な意味を持つようになるといえるでしょう。
企業がパーパスを持つべき理由とメリット
パーパスを持つことは、企業にとって多くのメリットをもたらします。ここでは、パーパスによるメリットを6つ紹介します。
社会的影響力の拡大とポジティブなイメージ構築
まず、パーパスを持つことで、社会に対して何らかの価値を提供することが可能です。
社会課題への取り組みや社会貢献活動を通じて、企業の影響力を広げることができます。また、パーパスを伝えることで、消費者や投資家からの信頼を得ることができ、ポジティブなイメージを築くことが期待されます。
従業員エンゲージメントの向上と人材の獲得・定着
パーパスは従業員のエンゲージメント向上にも寄与します。エンゲージメントとは、従業員が自分の仕事に対して熱意や情熱を持ち、主体的に行動する度合いのことです。
パーパスは従業員に仕事の意義や目標を示し、やりがいやモチベーションを高める効果があります。また、パーパスは人材の獲得や定着にも役立ちます。特にミレニアル世代は、自分の価値観と一致する企業や仕事を求める傾向があります。パーパスを明確にし、発信することで、優秀な人材を惹きつけることができます。
顧客忠誠度の向上と競争力の強化
パーパスを持つことで、顧客忠誠度も向上させることができます。顧客忠誠度とは、顧客が企業や製品・サービスに対して継続的に購入したり推奨したりする度合いのことです。パーパスは顧客のニーズや感情に訴えかけることができ、顧客満足度やロイヤリティを高める効果があります。
また、パーパスは競争力の強化にもつながります。パーパスは企業の差別化要因となり、他社との競争に勝ち抜くための武器となります。
長期的な成長と持続可能なビジネスモデルの構築
パーパスは、長期的な成長と持続可能なビジネスモデルを構築にも役立ちます。なぜならパーパスは企業の方向性や戦略を示し、将来に向けたビジョンを描く助けになるからです。
また、パーパスはSDGsなどの社会的要請に対応することができ、持続可能な社会の実現に貢献することができます。これにより、企業は社会的な信頼を得るとともに、長期的な収益性や競争力を確保することができます。
イノベーションの促進と競争力の維持・強化
パーパスを示すことは、イノベーションの促進にも繋がります。イノベーションとは、新しい価値や解決策を生み出すことです。パーパスは従業員の創造性やチャレンジ精神を刺激し、新たなアイデアや提案を生み出す効果があります。
また、パーパスは市場や顧客のニーズに応えることができ、既存の製品・サービスの改善や新規事業の開発につながります。これにより、企業は競争力を維持・強化することができます。
法的・倫理的な要請への適切な対応と信頼性の向上
最後に、パーパスを設定することで、法的・倫理的な要請への適切な対応と信頼性の向上が期待できます。パーパスは企業の行動基準となり、法令や規則、社会通念に沿った正しい判断や行動を促します。
また、パーパスは企業の透明性や説明責任を高める効果があり、ステークホルダーからの信頼を得ることができます。
パーパスの設定方法
設定するための基本原則とポイント
パーパスを設定するためには、以下の4つの基本原則を押さえる必要があります。
①社会に対して企業が果たす役割や貢献を表すものであるため、社会的なニーズや課題に対する解決策となること
②企業の本質やアイデンティティを示すものであるため、企業の歴史や文化、価値観、強みや特徴などを踏まえること
③企業の方向性や目標を示すものであるため、将来のビジョンやミッションと整合性があること
④消費者やステークホルダーに伝えるものであるため、わかりやすく魅力的な言葉で表現すること
また、パーパスを設定する際には、経営者だけでなく、従業員や顧客などの意見やフィードバックを参考にすることも有効です。パーパスは、共感や共有ができるものでなければ意味がありません。
共有と浸透を実現する方法
パーパスを設定したら、次に重要なのは、それを社内外に共有し、浸透させることです。パーパスは、企業の行動や判断の基準となるものであり、組織全体で共有されるべきです。パーパスを共有し浸透させるためには、以下の方法が有効です。
広く発信すること
ウェブサイトやSNSなどのメディアを活用し、パーパスを明確に伝えることが大切です。また、パーパスに沿った活動や取り組みなどを積極的に紹介することも効果的です。
体感させること
パーパスだけではなく、それに基づいた具体的な行動や成果を見せることが重要です。社内では、パーパスに関連した研修やワークショップなどを実施し、従業員の理解や関心を高めることが必要です。社外では、パーパスに関連したイベントやキャンペーンなどを実施し、消費者やステークホルダーとのコミュニケーションを図ることが必要です。
評価させること
パーパスに基づいた行動や成果は、定期的に評価しフィードバックすることが大切です。社内では、パーパスに沿った目標設定や評価制度を導入し、従業員のモチベーションや成長を促すことが必要です。社外では、パーパスに沿ったCSR活動やSDGsへの貢献などを報告し、消費者やステークホルダーからの信頼や期待を得ることが必要です。
まとめ
パーパスを持つことは、企業にとって多くのメリットをもたらします。それは、
・社会的な影響力の拡大とポジティブなイメージ構築
・従業員エンゲージメントの向上と人材の獲得・定着
・顧客忠誠度の向上と競争力の強化
・長期的な成長と持続可能なビジネスモデルの構築
・イノベーションの促進と競争力の維持・強化
・法的・倫理的な要請への適切な対応と信頼性の向上
の6つの側面から証明されています。パーパスを設定するためには、社会的なニーズや企業のアイデンティティを考慮し、明確かつ魅力的な表現を心掛ける必要があります。
また、パーパスを共有し浸透させるためには、広報活動や体感の提供、評価とフィードバックの実施が重要です。パーパスを持つことで、企業は社会との関係を強化し、持続的な成長と社会的な貢献を実現することができます。
参考
複業人材を活かすには、自律分散的な人的ネットワークとパーパス重視の経営が不可欠だ|村上 臣(電脳コラムニスト) (nikkei.com)
ブランド・パーパス(ブランドの持つ存在意義)の力 | アクセンチュア (accenture.com)