プロフェッショナルとは「生きる」に「働く」を重ねること

変革コーチ 岸昌史×クロスメディア・マーケティング代表 美濃部哲也 [モデレーター 小早川幸一郎]


やりがいを持って働き、会社に、周囲の人に、社会に貢献できる成果を出す。誰もが、そうありたいと願う姿です。理想の働き方を実現するために必要なのは、とことんまでやり切ること、自分の大切な時間を注ぐこと。しかしそれは、「頑張って働く」「長時間残業する」といったことと同義ではありません。
アメフトで日本一を経験した後、三井物産、ボストン・コンサルティング・グループといった有名企業で働き、スタートアップを経て、「人と企業の変革」を支援する会社を立ち上げた岸昌史氏。そして、大手広告代理店の電通でキャリアをスタートさせ、サイバーエージェント、テイクアンドギヴ・ニーズ、ベクトルなど、数々のベンチャー企業で要職を務めてきた美濃部哲也氏。ジャンルの異なる業界で結果を出し続けて来た2人が、「プロフェッショナル」とは何かを語ります。

※本記事は、2023年10月に行われたクロスメディアグループ主催の対談イベントをもとに文章化し、加筆・編集を行ったものです。

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岸昌史(きし・まさふみ)

Axia Strategic Partners代表取締役
兵庫県西宮市生まれ。関西学院大学商学部、北京大学Executive MBA、桑沢デザイン研究所戦略経営デザインコース卒。学生時代はアメリカンフットボール部に所属。高校・大学で日本代表や日本一を経験。大学4年生のときには、チームの年間MVPに選ばれる。
2005年三井物産へ入社し、人事や営業など五つの業務全てでトップパフォーマンスを示した後、インドネシアへ単身駐在。新会社4社の立ち上げをリード。2016年ボストン コンサルティング グループに入社。2年目に年間MVPを受賞。その後スタートアップのTABILABO(現:NEW STANDARD)へ転職し、事業統括責任者として経営全般に関与。2019年経営コンサルティングとコーチングサービスを提供するAxia Strategic Partnersを起業。著書に『熱狂のデザイン』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

美濃部哲也(みのべ・てつや)

(株)クロスメディア・マーケティング 代表取締役
1993年電通入社。2000年より(株)サイバーエージェント常務取締役、(株)テイクアンドギヴ・ニーズ取締役、タビオ(株)執行役員、(株)ストライプインターナショナル執行役員、(株)ベクトル執行役員、ソウルドアウト(株)取締役CMOなどを歴任。経営とマーケティングを繋ぎ、経営の情報参謀機能を果たし、ステークホルダーとの間に共感と共創関係が生まれるブランディングを創造。事業会社で、カンヌライオンズ、スパイクス・アジア、ACC、広告電通賞など、受賞多数。2022年より現職。著書に『仕事の研究』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

モデレーター:(株)クロスメディアグループ代表取締役 小早川幸一郎

自分の「好奇心」が向かう方向に動く

小早川 まず、お2人の現在に至る経緯をお聞かせください。岸さんは、学生時代にアメフトをされていたそうですね。

 はい。小学校ではラグビーをやっていましたが、中・高・大はアメフトばっかりやっていました。今日はアメフトの試合だと思って、音楽を聞いてテンションを上げて、コンビニで栄養ドリンクを買って、「最高のパフォーマンスを出すぞ!」という気持ちでやってきました。

大学卒業後、最初に入ったのは三井物産という商社で、税務、会計、人事といろいろな経験をして、最後の3年間はインドネシアに駐在していました。そこでいくつかの会社の立ち上げに成功したんですが、立ち上げた会社の経営支援に入る中で、どこかうまく経営改革をリードし切れなかった感覚があります。

自分に足りない力を伸ばそうと思って、ボストン・コンサルティング・グループ(以下、BCG)というコンサルティング会社に転職しました。そこで徹底的に鍛えられたんです。

睡眠時間は毎日2、3時間で、新しいプロジェクトにアサインされると、何年も働いている先輩に「こんなきついプロジェクト、もう二度とないから」と言われます。でもまた次のプロジェクトでも「こんなきついプロジェクトはないから」と言われる。それをずっと繰り返していました。

ただ、いま振り返れば自分を成長させる最高の環境だったと思います。構造的に物事を捉えること、仮説を持つこと。インドネシアでうまくできなかったのは、こういう力が足りなかったからだったんだと実感しました。

小早川 美濃部さんの学生時代や社会人の最初の頃はどうでしたか?

美濃部 私は学生時代に2年間フランスに住んでいました。ヨーロッパは様々な人種の人がいて、性別も年齢も関係ない、まさにダイバーシティのカルチャーです。そんな中では、フランス語があまり話せず、自己主張もできない私のような日本人学生は、あまり相手にされませんでした。そこから頑張って、フランス語が話せるようになって、ロジカルに考えて、エモーショナルに表現するといったことができるようになると、初めて人として認められる。そんな経験をしましたね。

日本に帰ってきてすぐに就職活動だったのですが、友人から「電通っていう広告代理店があるぞ」と勧められたんです。受けてみたら採用されて、たくさんの厳しい先輩たちに熱心に指導していただきました。大変でしたけれど、希望していたマーケティングセクションに行くことができました。

私は好奇心に蓋をせずに生きてきたようなところがあります。私が30歳の頃、サイバーエージェントの藤田晋さんが、よくテレビに出ていました。面白そうな会社だなと思って、サイバーエージェントに伺ってみたんですね。すると藤田さんがいらっしゃって、その場で「うちに来てくれないか」と誘われました。3カ月ぐらい考えて、転職を決めました。

そこから現在まで、様々なベンチャー企業で働いています。起業家の人たちはみんな、いい意味でちょっと狂っています。最近、当社から『怪獣人間の手懐け方』(箕輪厚介著)という本が出ましたね。私も素晴らしい怪獣人間たちの側で会社が成長していく過程に伴走し続けている。そういう人生ですね。

小早川 お2人とも、敢えて厳しい環境を選びますね。それはなぜなんでしょうか。

 私の場合は、キャリアの途中で「頑張るのは駄目だな」と思うようになりました。「頑張らなきゃ」と思っている時点で、自分のありたい姿ではなく、「何者か」になろうとしています。他者評価を求めて生きるのはすごく窮屈だし、その先に喜びが待っているわけではありません。自分が納得できることを選んでいきたいですよね。

先ほど美濃部さんが「好奇心」とおっしゃいましたが、私も好奇心から始まります。行ったことのない崖の上の景色を見たくて、壁を上り始める。ある程度の高さまで登ると、もう手を離せなくなります。めちゃくちゃ大変な思いをして這い上がるんですが、そこには見たことのない景色が広がります。

最初からその景色があることを知っていたわけではなく、好奇心でその環境に飛び込んでみたら、結果的に頑張ることができたという感じです。もう一人の自分が、「なんてところに自分を放り込んでくれたんだ」「でもよくあのとき決断したな」と、怒りながら褒めるみたいな。

壁を登っているときも、「耐えている」という感覚はないんですね。それよりも、成長し続ける喜びが勝っている。やっていることすべてが自分の学びであり、どこかでモチベーションが落ちるということもありません。

美濃部 私も、すでに知っている場所には行かないなと思いました。見えないからこそ、見てみたいんですね。

私が入社した頃のサイバーエージェントは、創業から数年の時期で社員も100人いないような規模でした。飛び込んでみたら、それまで広告代理事業しかしてこなかった会社の中で、「メディア事業を立ち上げてください」と藤田さんに言われて、ゼロからのスタートです。

その後に入ったのは、テイクアンドギヴ・ニーズというハウスウェディングの会社です。そこでは、5年間、毎月新しい結婚式場をオープンさせる事業責任者を任されました。これも手探りです。

新しいことをするときは、想像を超える大変なことがたくさん待っています。でも飛び込んだからにはやらざるを得ないからやっていく。やっていく間にのめり込んでいく。そのうちいろんなことができるようになり、気がつけば夢中になっています。

新しい環境で、過去の経験は生きるのか

小早川 岸さん美濃部さんも、業種の違う会社を選んでいらっしゃいますね。新しい環境に入っても、それまでの経験やスキルは生かせるものなんでしょうか。

 大いに生かせると思います。まずは、新しい環境でも、経験があることで学ぶ順番みたいなものがわかります。どう学んでいけば知識が底上げされていくのかは、会社が変わっても同じベースで考えられるんですね。

それに、どこに行っても必要なのは、人と人との信頼をもとに、チームで成果を出していくことです。周囲の人たちとどんな関わり方をすれば一番良い形で貢献できるようになるのかも、共通しています。

美濃部 私も、過去にやってきたことは全部生きていると思います。やってみたらわかることがたくさんあって、それが次に挑戦するときの引き出しになります。

ただ、中途半端にやっていたら生きる経験にはなりません。新しい環境に行くと、その時点での自分の能力では絶対に対応できません。新しい会社にジョインするたびに毎回ゼロからのスタートで、外者の自分の経歴も、年齢も、性別も、役職も周囲の人には関係ありません。

そこを何とか頑張ってクリアして、脱皮する感覚です。脱皮してちょっと大きくなって、脱皮してちょっと大きくなっての繰り返し。そうしていくうちに、「死なない限りはへっちゃらだ」といった感覚になって、また一歩踏み出すことができます。そういう意味でも、やり切った経験がなければ次に進めないんだと思います。

 美濃部さんのお話をお聞きしながら、新しい環境に持ち込んでいいものと、いけないものがあるなと感じました。過去の成功体験や結果を出したやり方を意識し過ぎると、成長できないし、周囲にも貢献し切れません。

私は新しい環境に入るとき、3つのフェーズを辿っています。まず人に慣れて、その次に環境に慣れて、仕事に慣れる。

仕事が変わるときには、前職での経験もあるし、事前にその業界や会社について学習していきます。でも、結局はそこにいる人たちが一番詳しいですよね。そうした人たちの仲間になることができれば、いろいろ教えてもらえます。まずはいかにその人たちと良い関係を作るかが大事で、そのときに、「自分の前職では」みたいなことを振りかざしても、何もいいことはありません。

次は「環境」に慣れる。その会社やチーム、業界の仕事の進め方を理解することです。私の場合には、日系の大企業、海外の合弁会社、外資、スタートアップと、それぞれまったく異なる環境で働いてきましたが、各組織で特有の仕事の進め方がありました。意思決定スタイルもトップダウン型からボトムアップ型、意思決定の方法やスピードも様々です。周りの人の働き方を観察しながら、その「職場環境」に慣れる努力が大切です。

そして最後に、「仕事」に慣れる。その仕事を進める上で必要なより深い専門知識や業界知識を付けていく。その仕事における付加価値を理解した上で、個人としてもその価値の向上のために、差別化できる要素を考え、技を磨いていく。

人や環境、仕事に慣れるというのは、「守」、「破」、「離」で言うところの「守」に当たります。慣れてくると、「破」、「離」のフェーズに進むことができる。組織全体やビジネスを俯瞰し、過去の経験などを踏まえて「これっておかしいよな」「変えられるよな」と、変革に結び付け、組織のさらなる飛躍へとリードしていく。そうしたことをいつもやっていたように思います。

美濃部 周囲の人たちとの関係性を作るのはすごく重要ですよね。私の場合、テイクアンドギヴ・ニーズでは、週末に必ず地方の結婚式場に出張していました。現場の人と一緒に重たい物を運んだり、サービススタッフと一緒に接客をしたりするんです。

靴下を製造・販売するタビオという会社にいたときは、週に1回大阪の会社に出社していました。その会社では新入社員がトイレ掃除をする習慣で、私は当時40歳くらいで執行役員の立場でしたが、2年間くらい、朝7時半に出社して若い人たちと一緒に掃除をしていました。

新しい環境に入るときは、必ず初期段階で、大変な仕事をしている人や若い人と時間をともにするようにしています。すると、賛同してくれたり、何かあったときに助けてくれたりするようになるんですね。自分がそれまでに培ってきたスキルを生かすためにも、理解してくれる人、共感してくれる人を集めて、一緒にやっていくことが大事です。

小早川 なるほど。逆に、環境が変わることで大変だったことはありますか? 岸さんはBCGの後にスタートアップ企業に入っていらっしゃいますよね。

 はい。TABILABO(現:NEW STANDARD)という会社に、経営全般を見る事業統括のようなポジションで入りました。現在の仕事に繋がる、ものすごく壮絶なチャレンジと学びの機会だったと思います。

TABILABOでは、それまでにやってきたことが全然生きないこともありました。最初は、BCGのときのように、いろんな問題を整理して、論点も整理して、それを議論して解決していくというやり方で進めようとしていたんですね。

経営会議があれば「これを議論しよう」と、事前に整理します。でもTABILABOはクリエイティブな人たちの集まりで、会議もアイディアがばあっと溢れてくる場でした。私が前職と同じように会議を始めると、誰も話さなくなってしまいます。

そこで「あ、そうか」と気づきました。事前にゴールや議論の進め方を決めるのではなく、みんながアイディアを出した後に整理するという順番でないと、人の可能性を押さえつけてしまうこともあるんですね。

それに、スタートアップのカルチャーもあります。大企業のように、たくさんのリソースがあって、中長期で攻めるような会社であれば、しっかりプランニングして、失敗しないような戦略を立てていきます。一方で、スタートアップは「とりあえず10やってみて、残ったものが正解」といった考え方です。戦い方が全然違うんですね。そうした違いを一つひとつ学んでいきました。

小早川 大企業とスタートアップでは、異なるところがたくさんありますよね。美濃部さんも大企業からベンチャーに行かれていますが、その点ではどうですか?

美濃部 私も電通からサイバーエージェントに転職したとき、最初に失敗した経験があります。当時の電通は「鬼十則」といった行動指針で知られるように、非常にタフな文化でした。サイバーエージェントの人たちに同じように接したことで、総スカンを食らってしまったんですね。そこから反省して、やり方を変えていきました。

そうして経験を重ねていく中で気づいたのは、大切なのは自分のやり方で結果を出すことではなく、いかに貢献できるかだということです。起業家には「怪獣人間」が多く、その人がやりたいことは、常識的なやり方ではできません。そのときに「常識と違うから」と反論するようだと、私の存在価値はありません。

大企業は、その会社の仕組に乗っかり、常識に合わせてやれば、ビジネスが回るように環境が整えられています。しかしベンチャー企業は、非連続な成長をしながら進んでいきます。常識ではできないことをどうやったら実現できるかを、必死に、動きながら考えて、動きながら考える。ベンチャー企業で貢献するための方法は、そこに尽きると思います。

「熱狂」するための条件とは

小早川 岸さんは、スタートアップを経て、4年前に創業されたんですね。いまの仕事について教えてください。

 改めて人生を見つめ直す中で、自分がこれから20年、30年向き合い続けたいテーマを仕事にしようと決めました。それが「人と組織」です。

まず、未来の憧れとなるような存在が生まれるように支援したい。私が10代、20代のときに、40歳になっても50歳になっても、楽しくいきいきと生きている大人ってかっこいいなと思っていました。そんな人を増やしたいんです。

商社時代には採用担当をしていて、就職活動中の学生さんたちに対してキャリア支援をすることもありました。いろんな人に向き合い、本人も見えていないその人の可能性に気づく瞬間に立ち会うことが、すごく楽しかったんですね。そのときからずっとコーチングを学んで、現在も個人コーチングをしています。

同時に、危機感としてあったのが、目をキラキラさせて入ってきた学生たちが、どんどん目の輝きを失っていく姿です。事業を変革していく、イノベーションを生む、社会的な価値のある事業に携わる。そうしたやりがいのある仕事のためには、組織運営のモデルのアップデートも必要です。個人だけではなくて、組織も変わっていかなければ、人の可能性は大きく変化しません。

そうした観点から、組織変革のコンサルティングもしています。主に経営者に向き合い、一緒に理念を作ったり、その実現のための戦略を作ったり、制度設計をしたりといった、組織作りを支援しています。


小早川 岸さんのこれまでの経験をまとめたのが『熱狂のデザイン』という本ですね。この本を読んで私も共感するところがたくさんありました。美濃部さんもこの本に感銘を受けたということで、感想をお聞かせください。

美濃部 自分がこれまで体験してきたことが、言語化されているような印象でした。

例えば、まずリーダーが誰よりも熱狂していて、それを見て一緒に熱狂する人が生まれるとうまくいくという話。私はいつも2番目、3番目に熱狂する人でいることができたから、その会社に貢献できたのかなと感じます。

それに、パーパス・ビジョン・バリューズが大事だというところ。その会社がなぜそのビジネスをしているのかを、うまく世の中に伝わるように言語化することがすごく重要なんですよね。

自分がベンチャー企業にジョインするときに必ずやっていたのが、企業や経営者の想いを翻訳して「意味」を作ることでした。その会社がやろうとしていることは、市場にとって、お客様にとってどういう意味を持つのかを新しく定義する。それはまさにパーパスやミッションを整えていくということですよね。

小早川 熱狂は「熱く狂う」と書きますよね。熱狂するためには、自ら狂うものなんでしょうか。それとも周囲の環境が熱狂を生むのでしょうか。

 自分を熱狂させる方法というのは、2種類あると思います。

一つは誰に言われるでもなく没頭するような対象です。例えば、子供時代に夢中で虫を追いかけていたとか、絵を描くのが好きだったとか。僕の場合であれば、ずっと一人で工作をしていました。他人が見れば燃えるようなものではないけれど、自分は好奇心全開で向き合っていたこと。そうした対象に、エネルギーの生まれるヒントがあります。

もう一つは、周囲の人たちの存在です。自分を信頼して任してくれる、誰かに貢献できて感謝してもらえる。あるいは自分の弱さを支えてくれる仲間に感謝の気持ちを持つ。人との関わりを通して、自分の心に火が付きます。

美濃部 どんなことでも、とことんやってみなければ、本当の良さは見えてこないと思います。一つのことに注ぐ時間の「量」はすごく重要なんですよね。その人が持つ専門性は、注いだ時間に比例すると思います。

だからまずはとことんやってみる。そうして専門性が高くなってくれば、「あなただからお願いする」と言われるようになります。その期待に応えることで、「あなたに頼んでよかった。本当にありがとう」と喜んでもらえる。もらえる感謝の種類が変わるんですね。

その「ありがとう」がすごいエネルギーになって、時間が気にならなくなっていきます。以前に取締役を務めていた時代には、1年のうち休みが年末年始4日くらい、ほかはフル稼働といった時期が5年間くらいありました。いろんな人から「あなただから」「ありがとう」といってもらえる。そんな状況では、どれだけ忙しくても風邪も引かないし、めちゃくちゃ元気でした。まさに熱狂していたんですかね。

これが1日8時間、週5日働いていて熱狂できるのかというと疑問です。近年は「ワークライフバランス」といいますが、本当に必要なのは「ワークライフブレンド」です。「残業しろ、休日も働け」と言いたいわけではなく、仕事と人生の喜びがごちゃ混ぜになるくらいのところまで自分を持っていく。そうすれば時間を重ねるほどに専門性が高くなって、「あなたが必要です」と言われる人になれる。これは自分を振り返ってみてもそうですし、周囲の人たちを見てもそう思います。

小早川 岸さんもBCGのときには睡眠時間が2,3時間だったとおっしゃいましたね。多くの時間を仕事に費やすということについてはどう思いますか?

 誤解を恐れず言うと、あまり「会社のために」と思って働いたことがありません。「これは本当に社会に必要なことだ」と思えるから、熱狂できたんだと思います。

例えばインドネシアで事業を立ち上げたとき、「インドネシアは平均年齢が20代と若い国で、豊富な資源エネルギーを持ち、世界一の親日国でもある。ここで自分が事業を作ることがインドネシアのためにも、日本のためにもなる」と確信をもって働くことができました。

その後のBCGでは、最初全然結果が出なかったんですが、2年目にパフォーマンスが上がるきっかけになったのが、病院の改革でした。日本社会の課題である医療費削減に関わるプロジェクトで、大きな社会的価値を感じてやっていました。

社会や関わる人に向き合うことで、自分を燃やすことができ、結果的に会社のためになったということだと思います。

その上で僕にとって良い選択だったのは、自分の価値観に合う場所を選んだことです。経営者が見ているビジョンやその会社が大事にしているパーパス、バリューと、自分が大事にしているものが一致している。だから自分がやりたいことと、会社のためになることが重なる。価値観に共感できない場所を選んでいたら、きっと苦しんでいただろうと思います。

プロフェッショナルとは「生きざま」である

小早川 ありがとうございます。それでは最後に、今回のテーマである「プロフェッショナル」について、お聞かせください。プロフェッショナルであるということは、どんなことなんでしょうか。

美濃部 先ほどの話と重なりますが、プロフェッショナルというのは、「ほかの誰かじゃなくて、あなただから頼りたい」と言ってもらえる人だと思います。

どんな人でも、一生懸命やることができれば、その土俵には乗れます。その上で大事なことは、プロフェッショナルな人の生きざまを見ることです。プロフェッショナルな人ほど、仕事以外の時間でも、仕事のことを考えながら暮らしています。そういう人からの刺激を受けながら一生懸命やっていけば、若い人もすぐにプロフェッショナルになれるはずです。

また、プロフェッショナルな人のそばにいれるのは、熱量がある人だけです。どうしたって、経験の浅いうちは、プロフェッショナルに比べてスキルは足りません。でも、熱量だけは互角にできます。

では熱量とは何なのかをわかりやすく言うと、注ぐ時間量です。時間は命です。明日になったら寿命が1日縮まる。1日、1時間、1分、1秒が命。命の価値は役職や年齢や経験に関わらず同じですよね。たくさんの時間を注げる人はプロフェッショナルと一緒に仕事ができるんです。そこでプロフェッショナルが予想していない化学反応を生みだすこともできるんです。

 今の美濃部さんの話を聞いて思ったことでもあるんですが、僕はプロフェッショナルというものは、生きざまだと考えています。

どんな人でも、みんなプロなのではないかと思います。バラもプロだし、チューリップもプロだし、タンポポもプロ。その中でチューリップがタンポポと比べて綺麗かという話ではありません。

一つは、「何者か」になろうとするのではなく、「自分はこう生きるんだ」と決めることです。他人に依存するのではなく、自分の生き方としっかり向き合って、表現していく。それをより高め続けながら、未来に繋げていく姿勢です。

僕は死ぬ瞬間まで周囲の人に何かを与えて、世の中を元気にしていきたい。飴しか持っていなければ、飴をあげたい。何も持っていなければ、笑いを届けたい。そう生きていくと決めています。

その表現方法がいまはコーチングとコンサルティングですが、これから変わっていくかもしれません。昨日よりも明日、明日よりも明後日と、より良く進化していく。そのことで、より多くのものを与えられるように生きていきます。

そして何より、プロフェッショナルになる過程、プロフェッショナルとして生きる時間は、絶対に楽しいはずです。やっぱり、その仕事を楽しんでいる人にお願いしたいと思いますよね。花屋さんであれば、この花がどれだけ素晴らしいかを誰よりも熱く話してくれる店員さんのいるお店を選ぶと思います。誰よりもその目の前の仕事を楽しみ、熱狂している存在がプロフェッショナルなのだと思います。

↓岸昌史さんの関連動画はこちら↓

熱狂のデザイン
楽しく結果を出すチームのつくり方

著者:岸昌史
定価:1848円(1680+税10%)
発行日:2023年2月11日
ISBN:9784295407928
ページ数:288ページ
サイズ:188×130(mm)
発行:クロスメディア・パブリッシング
発売:インプレス
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