大人から子供まで全てのリーガルニーズに応える。人気YouTuber弁護士が結ぶ「法律」と「社会」。

アトム法律事務所 代表弁護士 岡野武志×クロスメディアグループ(株) 代表取締役 小早川幸一郎

「ハラスメント」や「コンプライアンス」といった言葉が頻繁に取り上げられる現代、法律の知識が、より重要になっています。多くの人が法律を難しいと感じる中、弁護士である岡野武志氏は、「大人から子供まで法律が100倍楽しくなる」というコンセプトのもと、YouTubeチャンネルを開設しました。このチャンネルは現在、登録者数が160万人を超える人気を博しており、著書『おとな六法』も売り上げ10万部に迫る勢いです。岡野氏の目指す「難しい法律を子供から大人までわかりやすく伝える」ことは、現代社会のニーズと深く結びつき、幅広い年齢層から支持を集めています。

今回は、岡野氏の人気の秘密や異色の経歴を、時代のムーブメントに沿ったビジネス書のヒットを生み出し続ける、小早川幸一郎が掘り下げます。

※この記事は、2024年2月に配信された、クロスメディアグループの動画コンテンツ「ビジネスブックアカデミー」を元に文章化し、加筆・編集を行ったものです。

岡野武志(おかの・たけし)

アトム法律事務所 代表弁護士 第二東京弁護士会所属。高卒フリーター生活10年を経て、司法試験に合格。アトム法律事務所を創業し、グループ全国12拠点の法律事務所に成長させる。その後、2019年から法律をテーマにした動画配信を開始し、YouTube 国内ショート動画クリエイターランキング1位(2021年)、TikTok CREATOR AWARD 教育部門最優秀賞を3年連続で受賞(2021年、2022年、2023年)。現在のYouTubeチャンネル登録者数は160万人(2024年2月時点)。著書に『人生逆転最強メソッド』(KADOKAWA)、『おとな六法』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

小早川幸一郎(こばやかわ・こういちろう)

クロスメディアグループ(株)代表取締役 出版社でのビジネス書編集者を経て、2005年に(株)クロスメディア・パブリッシングを設立。以後、編集力を武器に「メディアを通じて人と企業の成長に寄与する」というビジョンのもと、クロスメディアグループ(株)を設立。出版事業、マーケティング支援事業、アクティブヘルス事業を展開中。

アメリカでの経験が人生の尺度を変えた

小早川 今回は人気YouTuberであり、話題の書籍『おとな六法』の著者でもある弁護士、岡野武志さんにお話しをお伺いします。

まず、先生のこれまでのキャリアついて聞かせていただけますか。

岡野 私は大阪の枚方で生まれ、地元の公立小中学校を経て、大阪市内の進学校に進みました。当時、思春期ということもあったからかもしれませんが、大学進学や大企業への就職という一般的な道に魅力を感じませんでした。高校卒業後、特に目的もなくアメリカへ渡り約2年半を過ごし、帰国後はフリーターをして、モラトリアムな生活を送っていました。

小早川 一般的なキャリアパスから外れた道を選んでいくことに対して、不安は感じませんでしたか?

岡野 必要なお金を稼げて友達と楽しく遊べるならそれで十分という気持ちで、不安もなくマイペースに過ごしていました。

小早川 フリーターから一転して、司法試験を受けようと思ったきっかけを教えてください。

岡野 私が通っていた高校は、進学率がほぼ100%でした。みんな大学に行って、卒業すると就職していきます。22、3歳になってやっと「脇道に逸れすぎたな」と気づきました。でも、それで就職活動をしてみても、高卒・フリーターでは希望の条件の企業にエントリーすることすら難しかったんです。

社会で生きていくためには武器が必要だな、とインターネットで探して見つけたのが弁護士の資格です。一般的に難関資格といわれるものは、受験する条件が厳しかったり、何年も大学に行く必要があったりすることが多いです。例えば、医師免許を取得するには、6年間大学に通わなければなりません。それに対して司法試験は、高卒でも受けることができて、合格すれば弁護士になれます。これは魅力的だということで、挑戦を決めました。

小早川 司法試験を受験すると決めたら、一般的には、法科大学に行くことを考えるかと思いますが、先生はフリーターから試験に挑戦されていますね。合格する自信があったんですか?

岡野 アメリカでの経験が、人生のものさしを変えました。高校を卒業したばかりの若者にとってアメリカは未知の世界でしたが、飛び込んでやっていけばいろいろと開拓していけるという経験を得ることができました。司法試験の受験を決めたときも、この経験が勇気を与えてくれました。

弁護士事務所は立ち上げ初日から大人気

小早川 岡野先生は、弁護士であると同時に経営者としても活動されています。事務所設立のきっかけを教えてください。

岡野 司法試験に合格すると、司法修習とよばれる1年半の研修期間があります。その後、ほとんどの弁護士は法律事務所に就職して経験を積みますが、私の場合は違いました。変わった経歴ということもあり、ここでも就職活動が上手くいきませんでした。そこで、思い切って独立を決めました。

小早川 先生は、弁護士として働いた経験なく独立したということですね。事務所の立ち上げは順調でしたか?

岡野 立ち上げ当日から問い合わせの電話が途切れませんでした。これは、ウェブマーケティングに力を入れた結果だと考えています。

ユーザーの役に立つ情報をウェブサイトに載せることで検索エンジンに高く評価され、検索結果の上位に表示されるというアルゴリズムがあります。事務所のサイトで、法律で悩むユーザーに向けた情報を充実させることで、GoogleやYahoo!で検索すると、私たちのサイトがトップに表示されるようになりました。さらに、無料相談をしていることで「この事務所に連絡してみよう」と考える人が増え、たくさんの問い合わせに繋がりました。

立ち上げ当初は東京の事務所だけでしたが、インターネットを通じて全国から問い合わせが寄せられるようになったので、大阪、福岡、名古屋というように、徐々に支店を増やしていきました。

小早川 ウェブマーケティングは、いつ学ばれましたか?

岡野 学んだというより自然に身についていました。

私は、Windows95が発売されたばかりのころ、アメリカに滞在していました。当時、電話が主な通信手段でしたが、インターネットの掲示板やチャットを使う事で国境を越えても無料でコミュニケーションできることに驚きました。帰国して、司法試験の浪人中も、自分のウェブサイトとブログを作り、インターネットで知り合った人たちと情報交換をしていました。

YouTubeは時代のムーブメントに合わせたマーケティング戦略

小早川 先生の事務所は、ウェブマーケティングで十分な集客ができていたのに、さらにYouTubeでの情報発信を始めたのには理由があるのでしょうか?

岡野 2008年に開業したとき、ほとんどの人が情報検索にパソコンを使っていました。ですが、スマートフォンが普及したことで、YouTubeをはじめとする動画SNSを通じて情報を収集するユーザーが多くなってきました。「この流れに乗ろう!」と思い、2019年にYouTubeチャンネルをスタートしました。

小早川 YouTubeチャンネル開設から、登録者はどのように増えていきましたか?

岡野 最初の10万人までは、通常の動画を投稿していました。そこから160万人まで大きく登録者数が伸びたきっかけは、ショート動画を発信し始めたことです。

小早川 先生のYouTubeチャンネルのショート動画は、再生回数が500万回を超えるもの(2024年2月現在で82本)もありますよね。内容もキャッチーなテーマが多くて、私も楽しく拝見させていただいています。ネタは全て先生が考えているんですか?

『おとな六法』で紹介されている、編集スタッフの「のりちゃん」と私の2人が中心になって考えています。初めの頃は、2人だけで作っていました。今は配信した動画の数が通算で2,000本以上になり、ある程度の運営体制ができてきたので、1日に2本の動画配信ができるようになりました。事務所の弁護士にリサーチをお願いしたり、ライターに物語を作ってもらったり、チーム体制で取り組んでいます。

また、視聴者さんから寄せられた質問を動画で取り上げることもあり、特に面白かったものをスタッフみんなで話し合って『おとな六法』にも載せています。

ビジネスパーソンが、知っておくべき法律の知識

小早川 先生はYouTubeや書籍を通じて、幅広い世代に法律の知識を発信されていますね。その中で、特にビジネスパーソンが知っておくべき法律はありますか?

岡野 ビジネスパーソンにとって重要な課題は、コンプライアンスです。簡単にいうと、企業が法令や社会的ルールを守るということです。

最近、世の中で社会的地位のある人の行動に対しての見方が厳しくなっています。以前は、上の立場であれば、部下に粗暴な態度を取っても許容されることもあったかもしれません。ですが、今はパワハラやセクハラの問題に発展しかねません。社会人として、より責任ある行動が求められています。

私自身も、経営者という立場であり、意図せずに人を傷つけてしまうこともあるかもしれませんので、常に自制を意識しています。

小早川 仕事をしていると、あらゆる場面で人と関わることが多いと思います、その中で注意すべきことはありますか?

岡野 社会で働く中で、人間関係のトラブルは避けられないことがあります。特にお酒が絡む状況では、慎重さが必要です。例えば、会社の飲み会の席で起こった些細な問題がエスカレートして、警察が介入するほどの事態になることもあります。誰もが加害者や被害者になるリスクを抱えているのです。

小早川 トラブルに巻き込まれないために、普段から気を付けておくべきことはありますか?

岡野 トラブルは起きて初めて気付くものです。普段の生活の中では、つい「自分は大丈夫」と思ってしまいがちですが、自分は大丈夫でも、自分の関わるところで知らないうちに問題が発生することがあります。

例えば、会社の部下がその部下に営業ノルマを高く設定しすぎて、現場で無理が出てしまい、数字を改ざんして報告しているということがあるかもしれません。利益を上げることは大切ですが、利益追求にアクセルを踏みすぎると、組織全体で歪みが生まれます。

小さな問題が重なっていくと、大きな問題に発展し、会社を潰すような事態にもつながりかねません。

小早川 私も経営や仕事をしている中で、ルールや法律は知っておくべきことと感じています。社長や管理職だけでなく、社員全体が法律を理解し学ぶために、会社はどのような方法で伝えていくべきでしょうか?

岡野 法務部のような法律に詳しい部署が、社内の人間関係や組織の風土にも目を光らせる必要があると感じます。

また、企業に勤めている方は、法律を知っておくことで自分の権利を守ることができるという側面もあります。今は情報が手軽に検索できる時代です。疑問に思うことがあればインターネットで調べてみてください。

大人から子供まで法律が100倍楽しくなる伝え方

小早川 私は、28年間ビジネス書の出版に携わってきました。今回『おとな六法』が発売されて、これまでに出会ったことのない読者層からの反響が大きかったことに驚いています。ビジネスパーソンだけではなく、親子や学生が購入したという声も多くありました。

さいたま新都心のショッピングモールで開催された出版イベントには、1200人ものファンが集まりましたね。先生のYouTubeチャンネルの登録者も、老若男女問わず、多くの方に支持されている印象です。たくさんの方に法律を発信する上で、意識していることはありますか?

岡野 私たちのYouTubeチャンネルのコンセプトは、「大人から子供まで法律が100倍楽しくなる」です。法律が、皆さんの身近なものになって欲しいという気持ちで日々動画を作っています。

今回のショッピングモールのイベントには、親子連れの参加者がとても多く、まさに、私達の思いが具現化されたと感じました。

小早川 今後は、どんな事に取り組んでいきたいですか?

岡野 事務所としてもYouTuberとしても、共通する目標は、世の中のリーガルニーズにしっかり答えることです。

法律事務所では、訪れたクライアントに対してリーガルサービスを提供し、問題を解決する。YouTubeチャンネルでは、視聴者の方が知りたい法律的な情報を分かりやすく発信し、理解を深めるサポートをしていきたいです。

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