ビジネスにおいて何か一つを極めることで、その仕事の本質を理解し、完成度の高い仕事をすることができる。また、「一芸に秀でる者は多芸に通ず」ということわざもあります。営業、開発、管理、どの職種でも、突き詰めることで、広い視野を持つことでき、ほかの分野においても活躍することができるでしょう。
歴史上には、一芸に秀でた天才と呼ばれるような偉人が存在していました。生まれ持っての天才だったのか、努力して身に着けた一芸だったのか。そんな偉人たちはどのような人生を歩み、一芸に秀でる者になったのか、このシリーズでは、そんな偉人たちのストーリーを紹介していきます。
ウィリアム・シェイクスピアは、世界で最も有名な劇作家の一人です。
400年以上前に没した彼は数々の名作を生みだしました。機知に富んだ言い回しや巧みな筋立て、登場人物の心理を深く掘り下げ、人間のドラマを浮き彫りにした彼の作品は、今なお世界中で親しまれています。
そして彼の功績は、作品を生み出すだけにとどまらず、現代の文学や英語の語彙にまで大きな影響を残しています。
このコラムでは、文学という道を極めたシェイクスピアのストーリーを紹介します。
俳優として活動するかたわら、劇作家としても活躍
シェイクスピアは故郷ストラトフォードを離れ、ロンドンへと旅立ちます。当時のロンドンは、エリザベス朝演劇の全盛期を迎えており、多くの劇場が建設されていました。彼は、そんなロンドンの劇場で俳優としてのキャリアをスタートさせたのです。
彼が所属した劇団は、当時のロンドンで人気のある劇団の一つで、宮廷での上演も行っていました。シェイクスピアは、俳優として舞台に立つ傍ら、劇団の脚本も手がけるようになります。
彼の才能は、俳優としてだけでなく、劇作家としても開花していきます。彼は、次第に作品を書き始め、劇団の看板作家へと成長していったのです。ロンドンでの俳優活動は、彼にとって、劇作家としての基礎を築く重要な時期だったと言えるでしょう。
今なお多くの人を魅了し続ける不朽の名作
1590年代半ば、シェイクスピアは「ロミオとジュリエット」を発表し、一躍人気劇作家としての地位を確立します。この作品は、イタリアの都市ヴェローナを舞台に、二人の若い恋人の悲恋を描いた悲劇です。
「ロミオとジュリエット」の魅力は、何と言っても、彼が紡ぎ出す美しい言葉にあります。別れのシーンでは、「ああ、ロミオ、ロミオ!どうしてあなたはロミオなの?」というジュリエットの嘆きが、観客の心を揺さぶります。
彼は、この作品で、若さゆえの激しい情熱と、それがもたらす悲劇を見事に描き出しました。ロミオとジュリエットの恋は、二人の家族の確執に阻まれ、最後には二人とも命を落としてしまいます。しかし、その死によって、両家の対立は解消されるのです。彼は、愛と死のテーマを通して、人間の運命の皮肉を浮き彫りにしたと言えるでしょう。
この作品は、現在でも世界中で上演され、多くの人々を魅了し続けています。彼は、「ロミオとジュリエット」で、不朽の名作を生み出したのです。
シェイクスピアが生み出した1700の語彙
シェイクスピアは、英語の語彙を大きく拡張した人物として知られています。彼の作品には、名詞を動詞に、動詞を形容詞に変換したりして、約1700もの新しい語彙が登場すると言われています。
例えば、「Assassination(暗殺)」「hurry(急ぎ)」「laughable(くだらない)」「lonely(孤独な、寂しい)」「radiance(輝き)」などの単語は、彼が作り出したとされています。
また、「Heart of gold」は、直訳すると「黄金の心」になりますが、彼の作中では「思いやりがある」といった意味で登場し、現在でもよく知られているフレーズです。
これらの語彙は、現代英語にも受け継がれ、私たちの日常会話でも使われています。
彼が新しい単語を生み出した理由の一つは、彼が言葉の創造力に長けていたからでしょう。彼は、既存の単語を組み合わせたり、品詞を変えたりすることで、新しい単語を作り出しました。
彼の言葉は、彼の死後も人々に愛され続けています。彼が生み出した言葉は、英語の表現力を大きく広げ、文学や演劇の発展に貢献しました。私たちが今日使っている英語は、彼の創造力の恩恵を受けているのです。
現代に残るシェイクスピアの遺産
シェイクスピアの没後400年以上が経った今でも、彼の作品は世界文学に大きな影響を与え続けています。
彼は、近代小説の源流とも言われています。彼は、登場人物の心理描写を重視し、人間の内面世界を深く掘り下げました。この手法は、後の小説家たちに大きな影響を与えました。
また、彼は、英語という言語そのものにも大きな影響を与えました。彼が生み出した数多くの単語や熟語は、現代英語の語彙を豊かにしています。「All the world’s a stage」「To be, or not to be that is the question」など、彼の作品から生まれた名言は、英語を学ぶ人なら誰でも一度は耳にしたことがあるでしょう。
彼の作品が愛され続ける理由は、彼が描いた人間の普遍性にあります。彼は、人間の喜怒哀楽、光と影を見事に描き出しました。時代や文化を超えて、私たちは彼の作品に、自分自身の姿を重ね合わせることができるのです。
没後400年以上経った今も、シェイクスピアは世界文学の頂点に君臨し続けています。彼の作品は、これからも世界中の人々を魅了し続けることでしょう。