連邦多角化経営で北海道から色んな世界を変えていく

「THE 100 VISION」という大きな目標(ミッション)を掲げ、連邦グループとして既存事業の拡大と新規事業で、100個の優良事業と事業経営者創出にチャレンジしているヤマチユナイテッドの代表、山地章夫さんに、経営と出版をテーマにインタビューをしました。

ヤマチユナイテッドは、札幌市に拠点を置くグループ企業です。2023年に創業65周年を迎え、事業数50、年商は250億円を超え、近年は北海道の就職人気企業ランキングではTOP10に入る、顧客だけではなく学生にも注目されている企業です。

山地さんが編み出した「連邦多角化経営」の内容は著書にもなり、そのユニークな経営手法は日本中の多くの経営者に支持されています。

今回は、経営者の気持ちが日本一わかる編集者の小早川幸一郎が、ヤマチユナイテッドの本社に伺いインタビューをしました。

山地 章夫(やまち・あきお)

北海道札幌市出身。50事業、年商256億円のヤマチユナイテッド代表。グループ目標「THE100VISION」を中心に1社数千万~数億円の新事業を次々に設立する「連邦・多角化経営」を実践。家業の問屋事業を引き継ぎ、経営危機になるも、その経営手法で札幌発のユニークビジネスを次々と起業し成功。注文住宅、住宅リフォーム、インテリアショップ、通所介護、英語教室、レストラン、セミナー教育事業、住宅フランチャイズ本部、介護フランチャイズ本部、イベント企画施工、建材商社、家具メーカー、不動産賃貸事業など50以上の事業を成功させている。グループ企業の(株)ジョンソンホームズは注文・建売住宅着工戸数札幌1位(2020年)。就職人気企業ランキング10位(日経新聞2021年)、2015年船井総研グレートカンパニー大賞受賞。社員も社長も「仕事と人生をとことん楽しむ」というやる気が出る経営手法、数多くの事業を簡単に統括する仕組み、若手幹部を次々と採用、育成される仕組みなど、全国の経営者から注目されている。「連邦・多角化経営実践塾」塾長。著書『会社を強くする多角化経営の実戦』『新規事業と多角化経営』(クロスメディア・パブリッシング)など他多数。

小早川幸一郎(こばやかわ・こういちろう)

クロスメディアグループ(株)代表取締役。出版社でのビジネス書編集者を経て、2005年に(株)クロスメディア・パブリッシングを設立。以後、編集力を武器に「メディアを通じて人と企業の成長に寄与する」というビジョンのもと、クロスメディアグループ(株)を設立。出版事業、マーケティング支援事業、アクティブヘルス事業を展開中。

「企業は人なり」、人材採用が事業成功の要

小早川 山地さんは私にとって経営のメンターです。今まで本の編集を通じて経営や人生について多くを学ばせていただきました。

山地 そうですか。そう思ってもらえてうれしいです。

小早川 さて、経営についてお話していただく上で、最初にヤマチユナイテッドの経営理念が生まれた背景を教えていただけますか?

山地 ヤマチユナイテッドは、昭和34年に私の父が兄弟の会社から建材卸売部門を独立させ山地商事として札幌市で創業しました。

私は東京の経営コンサルティング会社を経て父の会社に入社しました。当初、私はまだ家業については実力がなく、経験豊富な先輩社員からは自分の仕事への考えをなかなか理解してもらえませんでした。そのため、それだったら何か新しい事業を自分で起こしてみようと決心したのです。

事業を起こす上でまず取り組んだのは、採用活動です。コンサルティング会社で働いていたときに「企業は人なり」という考えを叩き込まれました。私の想いに共感し、情熱をもって一緒に事業を進めることができる幹部を自ら採用、育成しようと考えたのです。

採用活動には、会社の考えや方針を明確に伝える手段が必要です。当時、社是はありましたが、具体的な経営理念といえるようなものはありませんでした。そのとき32歳で入社したばかりだった私は、創業者である父の想いを聞き、これまでの社是を参考にして今に続く新しい経営理念をつくりました。

以降、新卒採用をメインとして計画的に採用を行い、独自の新人教育プログラムと新規事業の機会をたくさん創ることにより、若手幹部を多数輩出しています。採用と育成に全社で力を入れたことで、ヤマチユナイテッドは北海道就職人気企業ランキングTOP10に入るようになりました。

小早川 最近は、ビジョン、ミッション、バリューといった経営理念をクリエイティブな言葉で表現する会社が増えていますが、その当時はどうでしたか?

山地 一般的に実直で当たり障りのない言葉が多く、文章のような形式が一般的でした。ビジョン、ミッション、バリューといった概念が広まったのは、ここ10年くらいではないでしょうか。優秀な人材を採用し、会社をまとめるのにこれらの概念が重要だと認識されるようになったからでしょう。

例えば、私たちの会社は北海道に根ざしています。そのため、求職者の中には地元愛の強い人が多いです。それなので「北海道をより良くする」「北海道から全国へ、そして世界へと発信していく」という目標を掲げると、とても魅力的に映ります。これは東京の会社が同じことを言っても得られない反響です。この違いを意識して経営理念を考えました。

小早川 私が山地さんと初めてお会いした18年前から、ヤマチユナイテッドは現在のミッションである「THE 100 VISION」を掲げ、ホームページや紙媒体を用いて自らの言葉で情報発信をされていましたよね。

山地 これは採用活動をする中で生まれたアイディアです。あるとき、採用支援会社の担当者から「大企業はトップが表に出ることが少ないため、トップが自らビジョンを語ることで他社との差別化を図るのが採用活動に効果的だ」というアドバイスを受けました。そこで学生向けのセミナーを開催することにしたんです。その資料を前夜に作成しているとき「100人の経営者を作る。君たちもその1人になれ」というコンセプトの「THE 100 VISION」を思いつきました。これが、翌日、セミナーの参加者から大好評だったんです。このビジョンに共感した人たちが現在の幹部にまで成長し、会社の成長に大きく貢献しています。

当時、会社は今より小規模だったので、THE 100 VISIONの言葉には100億円の売り上げ、100年続く企業などの想いも込めています。その頃は少し大きな目標だったかもしれませんが、一貫して情熱を持って「絶対にこれを成し遂げる」と語り続ければ、共感してもらえると思っていました。これは今も続けていることです。

企業経営は人の魅力だけでは成り立ちません。経営理念という明確な目標があって、さらに、それを熱く語ることができる人がいれば、「この企業が世界を変えるかもしれない」「この人の言葉で世界が変わる瞬間に立ち会えるかもしれない」と感じる人がいるんです。

本を書く過程はまさに「人生の棚卸し」

小早川 さて、次は出版についての話を伺いたいのですが、THE 100 VISIONが誕生してすぐに本の出版を考えられたんですよね。

山地 そうですね。先ず本の内容でもある経営についての話をしたいと思います。経営トップとして複数の事業を担当しながら、グループ発展につながる、取るべき経営戦略の答えが出ない苦しい数年間がありました。そのときに研究した結果、3つの経営方針にたどり着きました。
1つ目は事業の多角化で複数の太い柱を建てて、景気の波のリスク回避と事業の拡大をねらうこと。
2つ目はそれらの事業、企業をホールディング会社のもとで1つの連邦として経営すること。
3つ目はトップダウンとボトムアップをミックスした、社員参加型の経営をすること。
これが後日まとめて「連邦多角化経営」となり、本のテーマにもなります。

それ以来、各事業は幹部中心に自律型組織による自主計画、自主管理、自主評価の仕組みで運営されるようになりました。
さらにグループ全体を1つの会社のように仕組みで統括管理することで、個別事業の管理や業績など課題対策に追われなくなった私は、新規事業開発や経営システムのブラッシュアップに注力できることとなりました。

このように経営を幹部や社員に丸投げできるようになったときに、この経営手法は世の中の経営者にも役立つのではないかと思い、情報発信したいと考えるようになり、出版に挑戦しました。

小早川 それが1冊目の著書『丸投げチームのつくり方』ですよね。

山地さんが出版を検討していたとき、大手や老舗のビジネス書出版社からも声がかかっていましたが、その中で創業2年目のベンチャー出版社の当社を選んでいただいたときはとてもうれしかったです。

山地 経営者のことは経営者が一番わかっているじゃないですか。だから、編集者で経営者の小早川さんと一緒に本をつくるのがベストだと思いお願いをしました。

小早川 電話でこの話をお聞きして、編集者で経営者である自分の価値を知ることができました。他人の価値を再表現するプロを自認していましたが、自分の価値は自分ではなかなかわからないものですね。

はじめて本を書くというのはどうでしたか?

山地 自分の考えを文章にするというのは、これまでにない体験でした。文章を書くという知識もなかったので、他の経営書を見様見真似で書いて原稿を提出したら、ほとんど修正がなく校正原稿が戻ってきたので驚きました。そのとき、小早川さんから「これでいいんです。生の声には迫力があり、人の心に響くんです」と言われました。それまで、本を実際に出版できるか半信半疑でしたし、文章を書く技術が必要だと思っていたので、この言葉によって、自分の考えや発信する文章に対して大きな自信が持てたんです。

小早川 私は編集を「他人の頭の中を言語化する」と定義しています。山地さんとは、リアリティのある経営の本をつくりたいと思っていました。編集をし過ぎず、山地さん独自の表現で、その人となりを読者に伝えたかったんです。

本をつくっているときに、山地さんが「原稿を書くこと自体に大きな価値がある」と言われていたことが、とても印象に残っています。どのような価値を感じましたか。

山地 本の出版は私にとって大きな転機となりました。本を書く過程はまさに人生の棚卸しでした。執筆中に「この出来事はいつだろう」「この決断は何年ごろだったか」といったことを振り返りながら、それらを本に盛り込んでいくことで、深く自分の考えを理解する機会にもなりました。

実際に文章を書いている中で、自分の失敗、教訓、成功については、自らの生きざまを反映させて表現することが重要だと感じました。実際に体験した人でなければ、その真意や感情は伝えられませんし、リアリティを表現するのも難しいでしょう。例えば、誰かが何かを言ったという伝聞の文章を読んでも、心に留まらないことが多いです。しかし、その人自身の言葉で語られた内容は、読む人の目を惹き心を動かします。

経済効果は10億円⁉

小早川 本を出版することで何か経営に寄与することはありましたか?

山地 今回の取材にあたって、出版をしたことでの経済効果を算出したら、マーケティングやリクルーティング、ブランディングなどで10億円ほどの効果があったことがわかりました。特にブランディングに大きな効果があり、講演やイベント、会合に参加すると、「あの本の山地さんですか?」と声をかけられることがよくあります。当社のフランチャイズ加盟店の方々からも、「100VISIONの山地さんのフランチャイズですね」と言われたと聞くことが多くなりました。本の内容に共感し、フランチャイズに加盟してくれる人が増え、直接的な売上のアップにつながっています。

また、知名度が上がることで、講演依頼が増え、私が主催する『連邦・多角化経営実践塾』の受講者数も増加しました。

他には、本を書く過程で自分の考えを整理し文章にしたことで、考え方に一貫性が生まれ、講演やセミナーで自分の想いを正確に伝えることができるようになりました。これが採用活動にも良い影響を与えています。経営に関する本なので、キャリア採用なら理解できるのですが、直接的なターゲットではない学生にも効果的で、優秀な人材を採用できるようになりました。

「パーパス」は生産性を上げるためのツール

小早川 日本中に価値ある事業を展開している会社は多いのですが、自己表現が苦手でもったいない会社も多いです。そういった会社を当社の編集力で再表現することで、日本をもっと良くすることができればと考えています。

山地 再表現で言えば、ヤマチユナイテッドは創業65周年を迎えたことを記念して、何か意味のあることをしたいと考えていました。そこで、経営理念をブラッシュアップすることにしたんです。以前から「世の中に幸せをばらまく」という経営理念を掲げていましたが、抽象的すぎて社員はそれぞれ違った捉え方をしてしまうと考えていました。
会社が成長するにつれて当初抱いていた方向性を見失う社員も出てくるでしょう。そのときに迷わないように、しっかりとした軸を作りたいと思いました。私が引退した後も、その軸がしっかりしていれば、社員は簡単に原点に戻ることができますから。

例えば新しい事業を始めるときにも、「これは本当に私たちの進むべき道なのか?」と自問自答する必要があります。そうした疑問に対して、明確な枠組みを設けたかったんです。

小早川 事業が拡大する中で、社員数も増えていきますよね。たくさんの社員にどのように経営理念を伝えているんですか?

山地 単に上から「こうしなさい」と指示されたことは、社員には浸透しません。そのため、制作過程にも時間をかけ、社員を巻き込みながらパーパスをつくり上げました。

月に一度の経営会議で議論を重ね、アンケートを通じて意見交換をし、多くの社員の声を聞くことで、みんなが納得できる概念を定めたんです。この概念に基づいて成果を出す指標として「2030年100VISIONの達成」という具体的な目標も掲げました。
今、この目標に向かって連邦グループとして既存事業の拡大と新規事業で、100個の優良事業と事業経営者創出にチャレンジしています。

小早川 言葉をつくることは、その世界をつくることだと思うんです。今後も社員とのコミュニケーションを通じて、ヤマチユナイテッドのコアバリューやミッション、パーパスを時代や会社の規模に合わせて更新していくのでしょうか?

山地 企業は経営に油断したら業績はすぐ落ちていきます。常に新しい手を打ち、新しいことを取り入れて進化させなければ、すぐに時代遅れになってしまう。これは歴史が示している通りです。時代に合わせて価値観を少し変えたり、新しい要素を加えたり、古いものを取り除くことも必要だと思っています。コアバリューやミッション、パーパスは生産性を上げるためのツールとして柔軟に変更しながら活用していきたいです。

時代のニーズに応える「かっこいい」事業をやり続けるために

小早川 ヤマチユナイテッドは現在も積極的に多角化経営を進めて新しい事業を展開されていますね。その事業のアイディアはどのように生まれるのでしょうか?

山地 私だけではなく現場からもたくさん生まれています。新しい事業のアイディアは、既存の事業資源を活かし、各部署が持つミッションを統一することで具体化されていると感じます。
例えば、私たちのグループ会社の1つである(株)ジョンソンホームズでは、「いつまでも続く、自分らしい幸せな暮らしを提供する」というコンセプトのもと事業を展開しています。このコンセプトは、「人生」と「暮らし」というキーワードからインスピレーションを得ています。それに基づき、カフェやインテリア、リノベーション、オーダーソファの製造・販売など、私たちならではのユニークな事業を生み出しています。

さらに、イベント事業を手掛ける(株)アンカーから派生して、最近は警備会社を設立しました。この新会社は「みんなが憧れるような、世界で一番かっこいい警備会社をつくる」という社員のアイディアが始まりです。この提案をされたときに私は、「新しい試みだ! 挑戦してみよう!」と答えたんです。社員が挑戦したいという熱い想いも、提案する事業自体も「最高にかっこいい」じゃないですか。

小早川 10年前に山地さんの多角化経営をテーマとした講演をお聴きしたとき、すでに、住宅、家具、カフェ、さらにはイベント事業に至るまで、幅広い事業展開をされていました。それは、一見すると一貫性がないように感じるかもしれませんが、「かっこよくて豊かな空間をつくる」というコンセプトですべてが繋がっていると聞いて、なるほどなぁと感動したんです。そのコンセプトは今も変わらず続いていますか?

山地 一貫しています。かっこいい事業をやり続けていきたい。そのために、時代に合わせたセンスのいい商売に少しずつシフトしていきたいです。
今、当社の事業は、かっこよさでは業界トップクラスだと思っています。社員の想いも一緒です。自社の製品やサービスに自信があるから、社員全員が北海道から全国制覇する勢いで事業に取り組んでいます。

例えば、5年前に始めた分譲住宅事業は、すでに北海道で第2位のシェアを獲得しています。かっこよくてセンスのいい暮らしを販売スタッフが自信を持ってお客様に勧めることが、お客様から高く評価されています。センスのいい商品とスタッフの対応が競合他社との差別化になっているんです。

小早川 新しい事業をする上で、社長として大切にしていることはありますか?

山地 私の座右の銘は「人生を楽しく」です。仕事も人生もとことん楽しむという姿勢でいるので、まわりからは「本当に楽しいことしか考えていないね」と言われることが多いです。自分が欲しいもの、興味のあるものを展開していった方が楽しいじゃないですか。お祭り大好きだからイベント事業をやるし、健康に興味が出てきたからジムや介護事業をする。

みなさん仕事にたくさんの時間を割いています。仕事が楽しいと人生が楽しくなると思いませんか。だから、リーダーが一貫したビジョンを忘れずに熱く語ることで、「このビジョンに賛同すれば、自分の人生がより楽しく、意味のあるものになるかもしれない」と思ってもらえる。私はリーダーとして、新人にもベテランにも理念やビジョンを示し情熱を持って、共に素晴らしい世界を築いていこうと呼びかけています。魔法をかけるんです。

ヤマチユナイテッドには、私の想いに共感し伝えられるリーダーが大勢います。そんな社員たちと一緒に、これからも、もっともっと面白くて相当かっこいいことやりますよ。

編集・文:渡部恭子(クロスメディア・パブリッシング)

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