「ストーリー」で「応援してくれる人」を集める。商品のアピールポイントに何を加えれば、見る人を惹き付けることができるのか


地方を含む中小・ベンチャー企業の成長をデジタルマーケティング、ソフトウェア、メディア制作・運営、DXの領域で支援し、飛躍的な成長を続けているソウルドアウトグループ。取締役の北川共史氏と広報の畠中奈津美氏に、進化の道筋や背景を伺いました。根本にあったのは、「自分たちは地方の中小・ベンチャー企業のためにある」という理念。それが社内外の求心力につながっています。両氏は、「地方企業が発展するためには、企業と社会との接合部分をどうストーリーにして見せるか」と語ります。「商品の良さ」以上に、何を伝えるべきなのか。その意図を深掘りします。



北川共史(きたがわ・ともふみ)

ソウルドアウト株式会社取締役兼CCO、グループ執行役員、マーケティングカンパニープレジデント
1984年生まれ。2007年に株式会社オプトへ入社。2010年にソウルドアウトの立ち上げに参画。東日本・西日本営業部長・営業本部長を歴任し、2018年より営業執行役員に就任。デジタルマーケティングの課題解決力を武器に、全国の中堅・中小企業を最前線で支援し続ける。2019年4月より上席執行役員CRO(=Chief Revenue Officer、最高売上責任者)に就任。2021年3月にはグループ執行役員 マーケティングカンパニープレジデント、そして2023年4月より取締役に就任。


畠中奈津美(はたなか・なつみ)

ソウルドアウト株式会社コーポレートコミュニケーション本部本部長
1985年生まれ。2008年に株式会社オプトへ入社。3年間の法人営業を経て、2011年に人事へ異動。新卒採用と研修を担当。2015年1月にソウルドアウト株式会社に転籍。新卒・中途・派遣採用と社内研修全般の統括を行う。2017年広報の立ち上げをし、主にコーポレートブランディングやサイト制作、オウンドメディアの制作を行う。2021年6月に1年の産休から復帰。2023年1月にコーポレートコミュニケーション本部長に就任。グループ広報として企業ブランディングと採用ブランディングに取り組む。

聞き手:クロスメディア・マーケティング代表取締役美濃部哲也

切り捨てられる企業を、助けたかった


美濃部 まずは、ソウルドアウトの設立の経緯をお聞かせください。

北川 はい。弊社設立には、きっかけが2つありました。

1つは当時のデジタル広告支援マーケットの状況です。市場では、サイバーエージェント、オプト、セプテーニという3社が、三つ巴の状態になっていました。その競争から、各社が大手企業を支援するほうに力を入れ始めて、中小企業のお客様との取引を終了させる方針を打ち出したんです。

大口のお客様と小口のお客様を区分して「広告費が少ないお客様への支援はしない」と、業界全体が舵を切ったんです。当時、ネット広告市場は急成長中で各社のリソースも足りなかったし、仕方ない部分もあったんですが、当然、支援が打ち切られた中小企業は成長の一手を打てずに困っているという社会課題がありました。

2つ目は、弊社創業者・荻原猛の存在です。荻原には、起業に失敗した過去があります。かつての荻原は、事業を展開するのに有効なスキルを持っておらず、助けてくれる人もいなかった。だからこそ「いまの自分のITスキルやノウハウがあれば、あのときの自分を助けられたのに」という悔しい思いをずっと抱えていました。業界の方針で見捨てられる中小企業のことが、昔の自分を見ているようで放っておけなかったんだと思います。

美濃部 北川さんも立ち上げのメンバーとして、荻原さんの「助けたい」という熱意に共感されたんですね。2009年に30人で立ち上げた会社が、2015年に200人、2023年で600人と拡大していきました。大変な急成長を遂げている理由は何でしょうか。

北川 一番は、やはり理念ですね。僕らは、自分たちのことを広告代理店ではなく、あくまで地方企業や中小・ベンチャー企業の皆様をご支援する集団であると思っている。その先に日本の生産性が上がって、社会をより良くできると信じる社員が集まっている。その根っこの部分が、いろんな人を惹きつける磁石になっているのだと思います。

それに、経営視点でいうと、悩みやニーズがたくさんあるということは、マーケットが大きいということです。そのマーケットの中に、我々のような規模で同様の課題に向き合おうとしている会社は存在していなかった。となると、中小・ベンチャー企業様が頼れる相談相手は僕らしかおらず、パートナーとして関係を作りやすいと予想しました。そうなれば、課題解決の質が上がり、スピードがグッと速まる。実際に、これが僕らの競合優位性になって、組織を強くしてくれました。これからも優位性は変わらないと考え、このマーケットに一点張りしています。

全てを中小・ベンチャー企業の発展につなげていく


美濃部 畠中さんは、オプトからソウルドアウトに移籍されたそうですが、当時の印象をお聞かせください。

畠中 私はオプトで新卒採用をメインに担当していました。採用傾向として東京大学や京都大学の学生からの応募が当時少なかったオプトに対して、ソウルドアウトには、こうした大学の人たちが来てくれていました。「同じデジタルマーケ支援会社なのに、この違いは何だろう?」というところが不思議で、最初はそこに興味を持ちました。

いろいろ考えてみて、国公立大学は、国からの支援で成り立っている分、学生たちも、自分たちの学びを国に還元したいという意識が強いのではないか、東京大学や京都大学の学生はその中でも特に自分たちが国を牽引していくという自覚が強く、ソウルドアウトの理念が響いたのではないかと分析しました。

美濃部 ソウルドアウトの新卒採用は、地方出身者が大半だと伺いました。

畠中 例年、8割ぐらいが首都圏外の地方出身者ですね。会社説明会の会場は、キャリーバッグだらけです。

入社を決めてくれる学生たちの中には、実家が地方で自営業をしている人たちも多いです。いずれ地元に戻りたい、家業を継ぎたいという気持ちが強い。弊社は、現在23拠点(2023年10月末日時点)と地域の拠点が多く、そこが1つの魅力になっているようです。デジタルスキルを持った人材は、地方でも頼られますよね。人の役に立っているという実感を持てると、それは仕事のやりがいにもつながります。

今年から地方を舞台に、最速で事業経営に関われる(CXO候補)の採用も開始しました。2022年にスタートした「地方事業家採用」をベースとし、将来的に家業を継ぐキャリアだけではなく、地方で新しい事業やサービスを作り、発展させていくための事業経営に必要なキャリアを用意した採用コースとなっております。弊社の目的は、あくまでも「地方企業の成長」です。将来、地方で経営者となる人たちにデジタルマーケティングを教えて、人脈を作っておくことは、お互いのメリットになると考えています。

美濃部 なるほど。理念を体現する組織の在り方が徹底されていますね。しかし地域拠点が23もあって、しかもリモートワークが多いとなると、会社全体のマネジメントは難しそうに感じます。そこはどうされているのでしょうか。

北川 「地方の彼らが本社である、彼らの言うことが正である」と考えれば、マネジメントは決して難しくないんですよ。

もともと僕らの強みは、最先端のマーケティングノウハウを取得し、そのノウハウを地方の会社にデリバリーできることです。本社中心のマネジメントでは、上意下達は強くなっても、拠点からの情報伝達が弱くなる。「地域拠点が地方のお客様の課題を吸い上げたら、こちらですぐ解決の意思決定ができる」というところが重要な生命線なのに、拠点の声が届かないようでは困る。だから、地域拠点の少数意見を最優先で聞かないといけないんです。

リモートワークについては、理念実現の手段にもなると捉えています。リモートワークは一般的になってきていますが、実際にリモートワークをメインとした働き方でしっかりと売上を上げている企業は、まだ少ない。弊社がそこにチャレンジする理由は、地方企業の今後に役立てたいからなんです。

正直、業績のことだけ考えるなら、労働集約モデルの原理に従い、全員フル出社でやったほうがいいんです。でも地方の企業は、リモートをOKにしないと優秀な人材を採用するのが難しくなっています。リモートがOKであれば、日本全国どこにいてもその会社の仕事ができるので、優秀な人材を確保することが可能です。故に、僕らがまず実験台になり、リモートワークの失敗事例を洗い出して、顧客である地方の企業にフィードバックしなくてはいけない。そうした理念に沿った意思決定を行うということを心がけています。

企業のアイデンティティーを言語化する


美濃部 畠中さんは2017年からブランディングも担当されていますね。その頃の社内はどんな感じでした?

畠中 当時から、社内には熱い想いがすごくありました。ただ、それを世の中に伝えて、ファンになってもらうための、核になるキーワードがなかった。だから、みんなの共通言語になるものを作りたい、と思っていました。

それで、作ったミッションステートメントが「中小・ベンチャー企業が咲き誇る国へ。」です。 言語化されたものを見て「これだ!」とみんなが思いました。

それに合わせて、キービジュアルも作りました。生花を1万4000本使って、日本地図を作ったんです。一つひとつの花を、企業だと見立てて。

CGを使って簡単に作ることもできるのですが、あえて生花にこだわりました。世の中に存在する企業は、花と一緒で、同じものが2つとないからです。

美濃部 ビジュアルに添えた文章も素敵ですよね。

北川 この文章にはすごい力をもらいました。当時、僕らは、広告会社なのに、クリエイティブの力をそこまで信じきれてなかったんです。

でも、優れたクリエイティブを自分たちの武器にしてみると、すごい威力を感じました。あれで、クリエイティブというものをより好きになった気がします。読めば、みんなソウルドアウトのファンになってもらえると思います。

(参照:https://www.sold-out.co.jp/philosophy/mission

私たちは、日本の中小・ベンチャー企業のために存在しています。

素晴らしい技術があるのに、流通が難しい。どこよりも自慢のサービスがあるのに、広め方がわからない。いい商品が開発できているのに、売り方で悩んでいる。知名度はない、莫大な資金は使えない、労働力も足りない、ネットワーク(人脈)もまだつくれていない、物理的な距離の問題もある。

世界が振り向くその発明が、どこまでも純粋なその情熱が、未来を変えるその夢が、さまざまな問題によって押しつぶされそうになっている。

そんなことがあってはならない、と私たちは強く思います。

地域を、日本を、世界を変えるかもしれない「何か」が生まれ、そして価値のあるものとして市場に出ていく。そのために、私たちのテクノロジーがあります。私たちが培ってきたマーケティングスキルがあります。そして誰よりも、真剣に話を聞き解決しようとする社員がいます。

日本には、中小・ベンチャー企業という潜在能力があふれています。そのポテンシャルの花が1つでも多く開いていくことが私たちSOLDOUTの使命だと思っています。

日本の企業の99.7%が中小・ベンチャー企業で、できています。その1つひとつが咲き誇っていくことができたら、日本は元気に強くなれます。それが、私たちを含め1人ひとりの勇気・元気・誇りにつながっていくと信じています。未来への希望になっていくと確信しています。

その問題の、その夢の、その志のそばで。
ともに覚悟する。ともに挑む。

SOLDOUT

美濃部 ブランディングは、ストーリー作りが大事ですもんね。

畠中 当時の研修でこんな話がありました。「昔々、あるところにお爺さんとお婆さんがいて、お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に……」と言った瞬間、みんなが「『桃太郎』だ」と理解できる。でも、あれが「桃」や「鬼」といったキーワードの羅列だけだったとしたら、記憶には残らない。1個1個の単語の惹きが強くても、それは単なる点であって、線としてつながってない。一連の流れが1つのストーリーになって初めて『桃太郎』なんだ。これがブランドなんだと言われて、すとんと腑に落ちました。

美濃部 ブランドストーリーを定めて、変わったことはありますか?

北川 社員の行動指針ができたように見えます。以前なら、みんな、がむしゃらに「数字」を追い求めて働いていたんですが、いまは「この仕事は、どう理念につながるのか」ということを、現場の社員が上司に確認するプロセスが生まれました。あくまで「理念ありき」で行動できるようになったのは、大きな変化ですね。

お客様に対しては、もともと僕らの想いを理解してくださっている企業が多かったんですが、それに加えて、応援してくださる企業がさらに増えました。

もちろん仕事ですから、関係の継続には、結果を出すことが一番大事です。そのうえで、弊社の理念まで応援してくださっているとわかると、こちらも仕事を超えて相手を応援したくなります。結果、そのクライアントとの絆が太くなり、関係が長続きするようになりました。これはファクトにも表れていて、クライアントとの契約継続年数は明らかに伸びています。

逆に「理念なんてどうでもいい」というように接される企業には、「これ以上のお付き合いは致しかねます」と、はっきり言えるようになりました。自分たちの仕事の軸が、明確になったんです。

このストーリーは、僕らのアイデンティティーとして大事にしていかなければいけないし、それが結果として利益にもつながっているのだと思います。

応援してもらえる企業になるために必要なこと


美濃部 先ほど「応援してくれる人が増えた」と言われましたが、私は、これから企業にとってその考え方がすごく重要になると考えていて、「関係人口を増やす」と表現しています。

なぜ、若者がUターンするかというと、応援したい何かが地元にあるからだと思うんです。

仮に家業を継ぐ必要があって戻るのだとしても、地元で働く親への共感なしには、事業を引き受けようとは思わないですよね。それと同じように、地方企業や中小企業も、共感され、応援してもらえるストーリーをきちんと見せて、「想い」でつながる関係人口を増やしていくのが、大事だと思うんです。

北川 おっしゃる通りですね。地方企業が生き残るためには、まさにそれが欠かせないと思っています。

ストーリー発信という点で特に印象に残っているのが、株式会社青粒様です。同社は30年以上も前から、モロヘイヤ100%の健康食品を製造されています。モロヘイヤは「野菜の王様」と言われるくらい栄養豊富で、食物繊維も多く含んでいる。これを手軽に採れるよう加工した製品が、「あおつぶ」です。

とても優れた健康食品なんですが、当時の青粒様では、「自分たちが、何をやってるか」はわかっていても、「なぜ、やっているのか」が言語化できていませんでした。モロヘイヤブームの時には、「あおつぶ」も売れていたけれど、ブームが去った後、しばらく低迷期が続いていたんです。

美濃部 ファンがつかみ切れていなかったんですね。そういう企業の関係人口を増やすためには、どういうメッセージを、どのように発信すればいいのでしょう?

北川 まずは自分たちの活動が社会とどう接続するのかというところを、整理して発信することです。そのうえで、自分たちの強みや、自分たちの得意なことは何かを伝えていく。この順番が大事なんです。

ところが多くの企業が、どうしても「自分たちはこれが得意です! こんないいものを作ってます!」といったところから入ろうとします。昔話の『桃太郎』で例えると、「桃」や「鬼」だけを出してしまうからうまく伝わらず、「社会のなかで自分たちがどう役に立てるのか?」という物語があいまいなんです。

青粒様の事例では、「栄養価が高い」「腸内環境に良い」が「桃」や「鬼」です。この製品を、「誰のために、どういう目的で作っているのか」を伝えて初めて『桃太郎』になる。青粒様は自分たちの製品の価値をとらえ直して、「私たちは母の願いから生まれた会社です」で始まるストーリーを考えました。「モロヘイヤを通じて、愛があふれる健康人生100年時代を実現する」というビジョンを言語化できたんです。そこから、大きく変わったと思いますね。

(参照:https://aotsubu.co.jp/shop/pages/movie_detail_mission_statement

美濃部 いいですね。そうやって、ファンをどんどん広げていけば、日本中に関係人口ができますもんね。

北川 そうなんです。ストーリーは磁石です。人を惹きつけます。

自分たちの価値を信じ切れないと、どうしても「デジタル活用だ!」とか、「優秀な人を採る!」とか、施策に走りがちですよね。その前に、想いを整理する過程で、「こういう人たちもファンになってくれる!」と気付けると思うんです。

僕は、経営の仕事とは「自分たちは何部のキャプテンなのか」を宣言することだと思っています。それを言い切ることで、同じ部活に入部を希望する仲間が集まってきて、チームになれる。応援してくれる人が集まってくるんです。

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