〈シリーズ〉リーダーシップの本質を紐解く:社会への挑戦を続けた女性たちが描く歴史 vol.2 津田梅子


「リーダーや管理職は男がなるもの」、そんな固定観念にとらわれている人はまだまだ多く存在しています。そして実際に現在に至るまで女性がリーダーになることは少なく、2022年の日本では管理的職業従事者のうち女性が占める割合は12.9%(令和5年版 男女共同参画白書より)です。

男性有利な社会に負けず、果敢にチャレンジを続け、結果を出す。いま求められるリーダー像のようですが、そうした女性たちは、歴史上に数多く存在します。彼女たちは、どのように周囲を引っ張り、活躍してきたのか。偉大な女性から学ぶべきリーダーシップを、シリーズでお伝えします。


2024年7月3日に新紙幣の発行が始まります、新しい五千円札に印刷されるのは「津田梅子」と発表されました。彼女は現在の津田塾大学の創設者であり、生涯を通じて女子教育と女性の地位向上に尽力した教育家でもあります。

「all round women」
彼女が女子英学塾(現:津田塾大学)創設時に挨拶としてこの言葉を掲げました。女性の権利を主張するだけではなく、自立した女性になるために能力を付けて、男性と対等になり、広く世界で活躍してほしいという意味が込められています。

生涯を女性の高等教育に捧げた彼女の功績から、現代にも活かせるリーダーシップを紹介します。

歴史を動かす勇気と決断力

彼女は、女子教育の推進者、また女子大学創設者として知られています。彼女が持っていた勇気と決断力は、現代のビジネスリーダーにとっても貴重な教訓として捉えることができます。

明治時代は、女性が教育を受けること自体が社会的にあまり認められていない厳しい状況でした。それにも関わらず、彼女は自らの信念を貫き、女性のための大学を創設するという大きな決断を下しました。女性は良妻賢母であることが求められ、学問は不要と考えられていた時代の彼女の勇気ある行動は、結果的に社会に大きな影響を与え、女子教育の普及という大きな目標を達成することができました。

このような勇気と決断力は、現代のビジネスリーダーにとっても重要な資質です。ビジネスの場では、新たなプロジェクトを始める時や、組織の方向性を決定する際など、リーダーは常に決断を迫られます。その際に、強く自分の信念を持ち、それに基づいて行動する勇気が必要になります。また、決断を下すためには、リスクを評価し、最善の選択をするというリスクマネジメントの能力も求められます。

彼女は、困難な状況でも自らの信念を持ち続け、その道を突き進む強い継続力を持っていました。ビジネスの世界でも、困難な状況に遭遇した時、目標を達成するためには、根気強い継続力が必要になります。

また、彼女が男性主導の社会で、女子教育の重要性を訴え続けたことは、ジェンダー平等の推進者としての役割を示しています。この視点は、現代ビジネスにおいても重要で、組織の中で多様な視点を持つことの価値を認識し、それを推進するリーダーが求められています。

彼女の勇気と決断力は、現代のビジネスリーダーにとって学ぶべき点が多くあります。新たな挑戦を恐れず、自らの信念を持ち続け、困難を乗り越えて目標を達成するための継続力。これらの資質を身につけることで、リーダーとしての力量を高めることができます。

組織の明確なビジョン設定の重要性

彼女は、女性の地位向上こそ日本の発展につながると信じて、「男性と協同して対等に力を発揮できる女性の育成」というビジョンを掲げ、女性の高等教育に生涯を捧げました。それは彼女が目指すべき方向性を示し、同時にこれからの行動を一致・統一させる役割を担っていました。ビジョンとは、そういった役割を果たすものであり、これは現代ビジネスでもリーダーが持つべき特性です。

リーダーが明確なビジョンを設定することで、チーム全体が目指す方向が定まります。そのビジョンは、リーダー自身が持つべきものであり、同時にチーム全体に共有されるべきものでもあります。ビジョンが共有され理解されることで、チーム内の行動が一致し、統一されます。その結果、目標達成へと繋がるのです。

リーダーとしてビジョンを有することは、それをチームメンバーに効果的に伝達する能力とも密接に関連しています。ビジョンがメンバーに伝わり、共有されることで、チーム全体のモチベーションが高まります。そして、モチベーションの向上は組織の成長を促進します。その結果、組織の競争力が高まり、戦略策定の基盤となり、イノベーションの源泉ともなるのです。

そして、ビジョンは組織内のダイバーシティを促進する要素ともなります。彼女のビジョンは、女性という多様性を認識し、尊重することから生まれたものでした。これは現代ビジネスにおいても、多様な視点と経験を持つ人々に対する理解と尊重が必要とされていることと重なります。

津田梅子の教育と社会貢献

CSRとは、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)を指し、企業が利益を追求するだけでなく、社会貢献を行うことが求められる現代のビジネスにおける重要な考え方です。

女子大学を創設するという大きな決断を下し、その実現に向けて行動した、その目的は、女子教育の普及と質の向上、そして女性の社会進出の推進でありました。これは、女性の地位向上の重要性を認識し、その普及によって社会全体の進歩を目指したからです。また、彼女のリーダーシップのもと、女性の高等教育の機会が提供され、女性リーダーの育成にも力を注ぎました。

また、彼女は高等教育の普及を通じて、女性の権利の拡大を目指しました。これは、教育を通じた社会の進歩を目指す強い信念から来ており、その結果、女性の地位向上と社会意識の高揚につながりました。このように、彼女は自身のビジョンを追求するリーダーシップを発揮し、チームメンバーを統一する役割を果たしました。

そして、メンターとしての役割も果たし、多くの学生に影響を与え、学生たちの成長を助けた彼女は、自己成長の促進も忘れませんでした。こういった積極的な姿勢は、現代ビジネスにおけるCSR活動の考え方として参考になります。

急速に変化するビジネス環境に適応する力

現代のビジネス環境は、急速な技術の進歩やグローバル化が進む中で、日々変化しています。その中で生き抜くためには、新しいことに挑戦し、変化を恐れない姿勢が求められます。この点で、彼女の考え方や行動は、現代のビジネスにおいても大変参考になるものがあります。

女子大学を創設するという大きな変化を起こしたその背景には、新しいことに挑む覚悟がありました。この考え方は、現代ビジネスにおいても必要な能力であり、起業家精神やイノベーションにつながります。起業家精神とは、新たな価値を生み出し、自己のビジョンを追求する姿勢を指します。また、イノベーションとは、新しいアイデアや視点から新たな価値を生み出し、事業の成長や競争力を保つことを意味します。

また、彼女は、時代の変化に対応し、それをチャンスと捉える柔軟性も持っていました。これは、現代ビジネスにおいても重要なスキルです。テクノロジーの進歩は、新しいビジネスモデルやサービスを生み出すチャンスを提供します。しかし、これらの変化はリスクも伴います。そのため、リスクマネジメント、つまりリスクを認識し、それを適切に管理する能力も必要となります。

新しいことに挑戦し、変化を恐れない姿勢は、ビジネスリーダーにとって重要な要素です。そのためには、自身のビジョンを明確に持ち、新しい情報や知識を常に吸収する学びの姿勢が求められます。また、変化に対応し、新しい状況に適応するための柔軟性も必要です。

彼女の挑戦する精神と変化を恐れない姿勢は、現代ビジネスの中で活きる考え方であり、私たちにとって大きな示唆を与えています。

国際女性デーに津田梅子の学び続ける姿勢を考える

学び続ける姿勢とは、具体的には、最新の学術情報を追求したり、世界の動向を理解しようとする努力を惜しまないことです。さらに、新たな視点を見つけることによって、自身の知識基盤を広げ、深めることが可能になります。

彼女は、6歳より11年間アメリカへ留学し、帰国後は華族女学校の教師として、働きました。しかし25歳のときに、再留学をして、ブリンマー大学に入学します。当時学んでいたのは生物学で、彼女が執筆した蛙の発生についての論文は学術雑誌に掲載されています。

新たな挑戦を恐れないという強気の姿勢も、学び続ける心を形成する上で欠かせません。

挑戦し続け、学び続ける姿勢は、現代のビジネス環境においても高く評価されます。リーダーがどのように成長し続けるかを示す一例と言えるでしょう。新たな知識を吸収し続け、スキルを磨き続けるという姿勢は、組織全体の成長に寄与します。そして、その成長はリーダー自身の成長とともにあります。国際女性デーに、自分自身の姿勢を振り返って見ましょう。

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