【CROSS TALK】1人では成し遂げられない成果を生み出す。「最高のチーム」を創り上げるリーダーシップ

今まで、「人」と「組織」に着目することで200社以上のビジネスにモメンタム(良い流れ)を引き起こし、関わるチームを成功に導いてきた、株式会社リード・イノベーション代表取締役社長礒谷幸始さん。

かつて、アメリカンフットボールで日本一に輝くチームを率いた伝説のキャプテンは、そのリーダーシップを活かしビジネスの世界で「すべてのチームを史上最高に。」というミッションを掲げ、新たな伝説を生み出そうとしています。

そんな彼は、リーダーシップとは、あらゆる人がアプリのようにダウンロードしてビジネスや日常生活で必要な時に使える気軽で、楽しいものなのだと語ります。

今回は、編集者で経営者でもある小早川幸一郎が礒谷さんの卓越したリーダーシップと人を引きつける魅力に迫ります。

※この記事は、2024年5月配信の、クロスメディアグループの動画コンテンツ「ビジネスブックアカデミー」を元に文章化し、加筆・編集を行ったものです。

礒谷幸始(いそや・ゆきはる)

株式会社リード・イノベーション代表取締役社長
1981年、千葉県生まれ。私立江戸川学園取手高校から立命館大学経営学部へ進学。大学時代はアメリカンフットボール部に所属し、主将としてチームを大学史上初の日本一に導く。卒業後は日本アイ・ビー・エム株式会社に入社し、営業活動をしながら社会人アメフトXリーグ1部所属IBM BIG BLUEをキャプテンとして常勝チームへと成長させる。営業マネージャー、アメフトチーム創りの経験から、人や組織を成長させることに興味を持ち、その後は人事としてエンターテインメント企業、東証1部飲食チェーン企業の人財開発部門のGMを務め、飲食チェーン企業では2年間でエントリー数を5倍以上にするなど、採用難易度の高い業界で次々と採用を成功させる。2015年に株式会社リード・イノベーションを設立し、代表取締役に就任。200社以上のクライアント企業の幹部メンバー達と対峙した実績をもとに、クライアントと向き合いながら自社の史上最高のチーム創りも研究。同時にベンチャーキャピタリストとして、成長ベンチャー企業の支援を行っている。著書に『1万人を面接してわかった上位5%で辞めない人財を採る方法77』(プレジデント社)『無重力リーダーシップ』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

小早川幸一郎(こばやかわ・こういちろう)

クロスメディアグループ(株)代表取締役
出版社でのビジネス書編集者を経て、2005年に(株)クロスメディア・パブリッシングを設立。以後、編集力を武器に「メディアを通じて人と企業の成長に寄与する」というビジョンのもと、クロスメディアグループ(株)を設立。出版事業、マーケティング支援事業、アクティブヘルス事業を展開中。

人生の大失敗が大きなチャンスを生み出す

小早川 まず、礒谷さんがリーダーシップを発揮した、これまでのご経験について教えてください。

礒谷 私の育った環境は、 家族全員がアスリートで、全員がチームのキャプテン。私は、まさにリーダーのサラブレッドです。

家族の影響で、幼い頃からスポーツ一色。小学校から社会人になるまで、水泳、サッカー、アメリカンフットボールをしていました。運動神経も成績も良く、身体も大きかったので、自然とキャプテンを務めることが多かったですね。

小早川 リーダーとして、学生時代から多くの実績を残されていますよね。

礒谷  実は、中学時代に大失敗をしています。

当時、サッカーにハマり、本気で「2002年の日韓ワールドカップに出場する!」と考えていました。その目標に向かう中で、練習に真剣に取り組まないチームメイトを許せず、苛立ちをぶつけてしまったんです。結果として、チームは私を支持するグループと反発するグループに分裂し、最終的に崩壊してしまいました。

両親はとにかく真面目で「曲がったことはするな」と育てられましたし、私の学生時代はバリバリのスポコン世代。昭和のリーダー像が色濃く残っていて「強いキャプテン」がかっこいいと思い込んでいたんです。高校で始めたアメリカンフットボールでも同じような思い込みで、まるで恐怖政治のような厳しい環境を作っていました。

この時、「しくじりリーダー」を経験したからこそ、今の事業で成功者の見極めができるようになったと感じています。自分を変える大きなチャンスは、けっこうな確率で「黒歴史」のうちにかくれていると思うんですよ。

チームを日本一に導いたリーダーシップとは

小早川 その後、礒谷さんは立命館大学に進学し、アメリカンフットボール部を日本一に導く快挙を成し遂げましたね。

礒谷 立命館パンサーズのキャプテンになった年に、日本選手権で社会人チャンピオンチームを破って、立命館大で史上初の日本一を達成しました。

小早川 日本一を達成した、リーダーシップのコツはありますか?

礒谷 特に意識せずに行っていたことですが、振り返ると、勝利に向けた明確なポイントがありました。当時、私がチームに示した目標は「過去最大の得失点差で宿敵の関学(関西学院大学)をボコボコにする」でした。

日本一になることよりも「関学を徹底的に打ち負かしたい、ボコボコにしたい」という気持ちを伝え、チームメンバーの強い共感を得たんです。そして「ボコボコ」という言葉を、3年間負けてきた累計の得失点差を取り返すことと定義しました。

小早川 「日本一」という、抽象度の高い目標よりも、目の前の敵を「ボコボコにする」という直接的でシンプルな目標の方が、チームにとって分かりやすく、モチベーションを高めることができたということですね。

礒谷 もうひとつ重要なことが、「当たり前のことを当たり前にやる」です。

私たちは過去の関学戦のビデオを擦り切れるほど見て、徹底的に分析をしました。そこで気づいたことは、指一本、たった一瞬の差で勝敗が決まるということです。日常生活の些細な行動が、試合の結果に表われていると考え、チーム全体で日常の行動を改めました。例えば「トイレのスリッパをきれいに並べる」「トレーニング後、ウェイトルームを片付ける」など、本当に当たり前のことをチームで徹底したんです。

小早川 この時点で、勝つ自信はあったのですか? どのようにチーム全体をまとめたのでしょうか?

礒谷 もちろん、時には「関学強いな、勝てないな」と思うこともありました。でも、リーダーとしてブレずに「関学をボコボコにする」というメッセージを発信し続けることで、チームが一丸となったと感じています。

当時私は、ベンチプレスで160キロ、スクワットで180キロ、背筋で300キロを持ち上げ、50メートルを5.9秒で走り、五厘ヘッドにアゴヒゲを生やしていました。「腕ジャパン」っていうあだ名が付くくらい腕が太かったんですよ。「やれよ」と一言言うだけで、チームには相当な迫力だったと思います。「関学ボコボコにするためにトレーニングさぼるな!」と、ストイックにフィードバックしていました。

そして実際に、私たちのチームは宿敵である関西学院大学を48対14という大差で破り、関東大会の覇者早稲田大学と社会人チームのチャンピオン「リクルートシーガルズ」(現在の「オービックシーガルズ」)に勝って日本一になりました。でも、日本一になった時のことよりも、関学を倒した瞬間を鮮明に覚えているんですよ。

この時から、私はビジョナリーな視点で、日本一という仮想的な大敵に勝つという目標を掲げていたんだと、後になって思います。このキャプテン経験が、今の私の思考やビジネスマインドの土台となっているんです。

ビジネスが好転する「BLAST=突風」を巻き起こす

小早川 大学卒業後は、日本アイ・ビー・エム株式会社に勤め、企業の人事責任者や経営層を経て、株式会社リード・イノベーションを創業されていますね。今、どのような事業を行っているのですか?

礒谷 私たちは「すべてのチームを史上最高に。」というミッションのもと、「事業成長」と「チーム創り」を両輪でサポートしています。簡単に言うと、いいチームを創って「企業を儲けさせる」という事業です。

小早川 どのように儲けさせるんですか?

礒谷 私たちのサービスには「チームにブラスト(突風)を。」というコンセプトがあります。

私は、人生に大きな良い変化をもたらす突風を「ブラスト(blast)」、その突風を巻き起こす人のことを「ブラスター(blaster)」と呼んでいます。私たちが組織にブラスターとして入っていって、良い風を吹かせるんです。

ブラストを巻き起こすアプローチとして3つの事業を展開しています。1つは、組織開発や経営コンサルティングを通じて組織を形成し、経営をサポートすること。2つ目は、ブラスターとなりえる人材を紹介する、人材のエージェント業。そして3つ目が私たちの組織開発のノウハウを研修コンテンツとして提供することです。

最近では、これらに加え、コーポレート・ベンチャー・キャピタル事業を強化し、クライアントと共に成長を目指しています。

小早川  一般的に、コンサルタントの方からアドバイスを受けるときは、成功事例やフレームワークを教わるだけで終わることが多いように感じます。礒谷さんは実際に企業に深く入り込んで関わりを持っていくんですね。

礒谷 確かに、多くの組織開発コンサルティングは、「このフレームワークを導入すれば、みんなうまくいく」というような、同じ型の情報を提供しているだけということが多いですよね。これはコンサルタント側にとっては効率的かもしれませんが、クライアントにとっては最善とは限りません。

例えば、効果的なダイエットのアドバイスをされたとしても、成功するのは自己管理能力が高い人に限られます。みんなと同じ情報を得ただけでは十分な成果を得られない人もいます。

小早川 アメフトで培ったリーダーシップの経験を活かす事業の中で、体育会ではない企業も多いですよね。そこではどのように成果を出しているのですか?

礒谷 それぞれの企業特有のニーズに合わせてカスタムメイドの仕組みを構築しています。

例えば、ITエンジニアを中心とする会社から組織創りやコーチングを依頼されたとしても、静かなオフィスで働くエンジニアたちに対して「さあ!みんな頑張りましょう!」なんて大声で話しかけたら驚かせるだけでしょう。また、経済的・時間的な理由で仕事を選んでいる人もいます。この人たちに単に売上アップを要求しても効果は期待できません。でも、ここに私たちが入っていってマジックをかけることで、従業員の行動が変わるんです。

私たちは、各企業の特性を理解し、その方々が受け取りやすいような言葉や表現をお届けするということにこだわりをもって取り組んでいます。それには、あくまでフルカスタムメイドで対応すること。我々がクライアントにとって 価値ある存在になりたいと本気で思ったときに、これが一番効果的なんです。200社以上のいろんな企業で実践したノウハウによって、私たちの繰り出すマジックはどんどんバージョンアップしています。

仕事を人生の中の「エンターテインメント」に

小早川 礒谷さんの行っている、エグゼクティブコーチも大人気ですよね。 どのようなコーチングをされるのですか?

礒谷 アメフトのゲームには、勝敗を大きく左右するモメンタム(流れ)が存在します。経営の世界でも同じようにモメンタムが重要だと私は考えています。私の役目はアドバイスを通じて、ブラスト、つまり良い風を巻き起こし、良いモメンタムを生み出すことです。

これを実現するためには、まず、経営者が自らの事業に対する迷いを解消し、自己理解を深めることが必要です。経営者であっても、自分の理想と、経営者として「すべき」こととの間でジレンマに陥り、本質が見えなくなることがあるんです。

経営者の自己理解が深まることで、組織の構造や幹部の役割、ビジネスモデル自体が変わることだってあります。私のアドバイスがブラストになって、そこから新たなモメンタムが生まれ、良い方向に動き出すんですよ。

小早川 実際にはどのようにアドバイスをされるのですか?

礒谷 話の中で過去の体験や特性を聞き出し、そこに隠された本質を伝えることで、自己理解を深めていただくんです。

例えば、今朝、ある社長の相談を受けました。彼は労働集約型の業界で会社を経営していますが、私は彼の本質とそのビジネスモデルが合っていないと感じました。そこで、社長の本質を探るため、「もし一年間、お金も時間も完全に自由だったら、何をしたいですか?」という質問をしました。

この業界の経営者は、このような質問に対して「たくさんの人と楽しく過ごしたい」と答えることが多いんです。労働集約型は、たくさんの人に関わり、まとめていく必要がある事業なので人と関わるのが好きな人が向いているんですね。でも、彼の答えは「世界各国を旅して、さまざまなビジネスモデルを学び、今までにない新しいものを生み出したい」というものでした。この回答は、皆で一緒に作り上げるというよりも、何か新しいことを独自に学び、創造してビジネスを促進したいという彼の本質を示していました。

小早川 その社長は、なぜ自分の本質とは異なる事業を続けていたのでしょうか?

礒谷 資本主義社会の経営者は、基本的に組織を大きくすることや売上を伸ばすことが最も重要だと思いがちです。今回の場合は「労働集約型の事業をしているのだから人を増やして組織を大きくしなければならない」という思いが強くなり、「やらなければならない」という世界に陥ってしまっていたのです。

私は、もっと、自由 でいいと思うんです。 必ずしも売上を上げることが ゴールではないのです。適正に社員を評価できることであるとか、安心して働ける環境を作ることを目指してもいいと思うんですね。「うちはこういうコンセプトでやっています」というブレない意志からモメンタムは生まれると感じています。もっと言えば、自分の本質を理解して、やりたいことをやった方が、人生幸せじゃないですか。

小早川 礒谷さんには、話を引き出す魅力もありますよね。見た目がマッチョで、最初は少し近寄りがたい印象を持たれる方も多いと思うのですが、実際にお会いするとユーモアのある方だと感じました。

礒谷 以前、ある社長がメディアの取材で、私のことを「武器を持ったお母さん」と表現してくださったんです。

「組織に母性を届けてくれた」って仰られたんですよ。社内の人間関係による離職などの問題が起こっていたところに、私が入っていったことで、人を認める、違いを受け入れる、というスタッフ間の愛を感じられる組織になったと。「武器を持った」というのは、私が持つ多様なノウハウを「武器」として評価していただいたということです。この表現をお借りするなら、私は、たくさんの武器をもっていることで、いろんなタイプの人に影響を与えることができると考えています。

でも、すべての企業に「武器を持ったお母さん」が通用するわけではありません。時には厳しい指導を求められることもあります。そのときは、アメフトのキャプテンとして培った経験を活かして、ものすごいプレッシャーをかけたりもします。

小早川 礒谷さんがコンサルティングをする中で特に大切にされていることは何ですか?

礒谷 私は仕事の楽しさを多くの人に伝えたいと思っています。それにはまず、自分自身が楽しまないと。そして、それを伝える従業員も仕事を面白いと感じていないと体現できませんよね。

私は自らを「CEO」といっています。ただし、これは「Chief Entertainment Officer」、つまり私の役職は「チーフ・エンターテインメント・オフィサー」なんです。

リーダーシップという「アプリ」をダウンロードする

小早川 礒谷さんにとって、『無重力リーダーシップ』とはどのような本ですか?

礒谷 『無重力リーダーシップ』というタイトルをご提案いただき、「これだ!」と直感しました。

よく見かける リーダーシップに関する本は、「これからのリーダーシップはこうあるべきだ」などといった「べき論」が中心ですが、そういう表現はリーダーの可能性を限定してしまうと感じています。

リーダーシップは新卒1年目でも発揮できます。新人ならではの発想や提案でチームを成功に導くことだってある。経営者の方も、そういう事業に良い風を巻き起こせる人、つまりブラスターを期待しているんです。

ただ、いきなり「リーダーシップ発揮して」と言われても、自分を変えることって簡単じゃないですよね。Wi-Fiと電源がないとOSのバージョンアップができないように、自分の価値観や思想を変えるのは環境が整っていないと難しいものです。でも、新しいアプリをダウンロードして試してみることは簡単にできる。「リーダーシップを取り入れてみよう」と思ったときに、この本を新しいアプリだと思って手に取ってもらえたら嬉しいです。

小早川 礒谷さんにとって、リーダーシップとは何でしょうか?

礒谷 人を幸せにする薬だと思っています。

日常生活でも、リーダーシップを発揮する機会はたくさんあります。例えば恋人同士でデートの企画をするときには2分の1の確率でリーダー権が回ってくるわけですから。ただ、妻、子供、母親、兄弟、上司、クライアント先、ビジネスパートナー、社員。全部処方箋が違うんです。

処方の仕方をいっぱい知っておいて、必要なときに適量発揮することで人生は好転する。

小早川 最後に読者の方へメッセージはありますか?

礒谷  ぜひ、あなたのリーダーシップを磨いて素敵な人生にしてください。あなたの人生はあなた次第です。

編集・文:渡部恭子(クロスメディア・パブリッシング)

無重力リーダーシップ

著者:礒谷幸始
定価:1,738円(1,580+税10%)
発行日:2024年4月1日
ISBN:9784295409410
ページ数:192
ページサイズ:188×130(mm)
発行:クロスメディア・パブリッシング
発売:インプレス
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